報道関係者の危険現場接近事件簿

雲仙での悲劇を繰り返さないために,あるいは,知った上で納得して死んでいただくための情報提供



防災配慮に著しく欠けた報道

4.14.1900/2200のNHKニュース 3.31噴火を間近から撮影したアマチュアカメラマンの映像を,撮影行為の危険にまったく触れずに放送.


確信的接近

▼8日朝刊 朝日新聞だけでなく,読売新聞も北海道新聞も日本経済新聞もヘリによる近接写真を堂々と載せるようになってしまった.朝日新聞(記事ページ写真);読売新聞(トップページ・田中成浩撮影の写真);北海道新聞(トップページ写真);日本経済新聞(共同通信社からの配信写真.毎日新聞には,洞爺湖温泉に流れ出た泥流の空撮がのっているが,十分離れた位置から撮影されたもののようにみえる.

▼4.4午前以降(継続中) 4日の閣議後,有珠山噴火非常災害対策本部長の中山正暉国土庁長官が記者会見で,半径5km以内での上空からの取材活動を自粛するよう報道各社に要請したにもかかわらず,NHKをはじめとするテレビ各社がヘリコプター取材を続行している.NHKは災害対策基本法2条によって指定公共機関のひとつに指名されているから,その責任は大きい.右のキャプチャ映像はNHKが4.4.1920に放送したもの.このことに関するNHKからの説明 4.6夕刻以降は,自衛隊が撮影した映像,使うようになっているようだ.

朝日新聞社は,「4日正午すぎ」にヘリコプターを飛ばしたことを翌日朝刊写真に明記した.7日にも「6日,本社ヘリから」と書いたカラー写真を朝刊一面に掲載した.

▼4.3.1355以降 運輸省航空局による「半径5kmの範囲で高度1万メートル以下の飛行を行わないよう」との指示にもかかわらず,NHKを含むテレビ局など報道各社のヘリコプターが火口上空を飛行し続けているようだ.この事態はレッドカードやイエローカード提示の問題でなく,司法の問題だ.

▼4.3午前 国土地理院の依頼を受けた(株)シン技術コンサルと東北測量株式会社のセスナが,0940と1050の2回に渡って,火口のほぼ真上を飛行して垂直写真撮影.

▼4.2昼間 FNNクルーが洞爺湖温泉裏の火口に接近して火口からあふれ出す泥流を撮影.4.2.1730放送.いま,噴火口に徒歩であのように近づくのは自殺行為に等しい.彼らが危険区域内に立ち入ることができた理由はまだわかっていない.レッドカード

▼3.31.1430ころ NNNクルーが洞爺湖東岸ふきんの降灰域に車でつっこんで突撃レポートした.まあ,あのくらいの降灰なら,車のエアコン回りが痛むくらいですみます.インタビューを受けてくれたおかあさんはたいへんいい人だった.あんな脅かすような言い方しちゃダメだよ.

3.31.1430ころ 国土地理院の依頼を受けた(株)シン技術コンサルのセスナが垂直写真撮影のため,噴火中の火口のほぼ真上を飛行して垂直写真撮影.撮影高度1950m.飛行計画は噴火前からできていたのかもしれないけど,あの状況なら撮影を中止する勇気がほしかった.イエローカード

▼3.31.1430ころ JNN橋谷ヘリとANNヘリが噴煙に異常接近.生放送.ああまで近づいてとる必要があったのか.噴石に当たって墜落しなかったのは幸運だったからにすぎない.イエローカード

▼3.31.1308から ANNクルーが噴火現場にわざわざ接近.3.31.2200ニュースステーション/4.3.1750スーパーJチャンネルで放送

火口から放出された多数の岩石が空中を飛行して,クレーターをつくって着弾する映像がANNで3.31.2200から放送されました.この映像をどうやって撮ったのか疑問に思っていましたがわかりました.わざわざ見に行ったのですね.虻田町役場で噴火開始を知って,そのあと駆け上がったのですね.まさか!カメラは噴火口の出口(ノズル)をよく映しています.つまり,そこから(大きな)火砕流が出れば,直接流れてくる場所です.ちょっと小高いところのようですが,火砕流はそれくらいの坂をやすやすと登ります.雲仙岳の噴火で43人が犠牲になった北上木場の地形を知らないのですか?火砕流は時速100km以上のスピードで流れます.火砕流が発生したのを見てから逃げても間に合わないことを知らないのですか?帰り道,避難して無人になった住宅街でカメラを回したあと,あろうことか,着弾した多数の岩石の現場まで近づいて撮影しましたね.まさか!爆発が再開したらどうするつもりだったのですか.翌日もまた行ったそうですね.まさか!よく生きて帰ってこれました.神に感謝してください.レッドカードを3枚差し上げます.この意見を,テレビ朝日スーパーJチャンネルのページに置かれた意見受付メールアドレスにあてて,4.4.08:30:06に送信しました.

噴火中(1340ころ),住民にインタビュー
する「まさか!の社会学」高井正憲アナウン
サー.
国道230号沿いに建つ四つのバルコニーを
もつ家を噴火直後に撮影.ミニ火砕流にお
そわれた場所だ.
いや「200m先」にとどまらない.カメラマ
ンの足下にも岩石が転がっている.


偶発的接近

3.31.1308 JNN報道特集クルーが救急車に同行して国道230号上で取材中に噴火開始に遭遇.複数の噴石を車に受けた.ガラスが割れる音.3.31.2300/4.2.1800放送

3.31.1308 中日本航空のセスナが垂直写真を撮影中,噴火開始時にその地点の直上を通過


有珠のみなさんと,それから,報道にたずさわる方々へは,群馬大学教育学部早川研究室が提供しています.