堆積物から噴火をよみとる
Reconstructing Past Eruptions from the Deposits
 
 火山噴火のときには,地震・雷・大雨・斜面崩壊など通常はめったに起こらないことが集中的に発生する.これらによって堆積物中に不整合が形成されやすい.火山堆積物の間の不整合の存在をもって,そこで長い時間が流れたと結論することは,多くの場合,当たらない.
 約1800年前のタウポ噴火の最中に発生した激しい降雨で,ハテペ火山灰(HA)に深いガリー(gully;雨裂)ができている.その雨裂表面を黒色のロトンナイオ火山灰(RT)が薄く覆ったあとにタウポ超プリニー式軽石(TP)が降った.

 Walker (1981) は,この激しい降雨の原因は,噴火によってタウポ湖の水が空中に噴き上げられたからだと考えている.
(Taupo, New Zealand)
 渋川火山灰(FA)の上面が表面流水で削られている.浸食面の上にクロボクが3cmほど堆積しているので,噴火直後に削られたあと,次の伊香保軽石(FP)が降るまでの約30年間この地表面は植生に覆われて安定していたことがわかる.
(群馬県吉岡町上野原)
 N1.0テフラは,過去1500年間の伊豆大島テフラの中で最大規模(M4.8)である.11世紀中頃の噴火でつくられた.青黒色のスコリアは準プリニー式噴火の産物だが,それと互層する紫灰色火山灰は,多量の水が火道内に侵入して水蒸気マグマ爆発がしばしば起こったことを教えている.

 ここでもN1.0テフラの上面が深く削られていて(矢印),厚いラハールがその上を覆っている.
(伊豆大島二子山の東方)

 深さ2mのガリーが二層準に三つ認められる.海岸でおこったこの噴火は多量の海水を蒸発させて大雨を降らせながらタフリングを形成した.
(伊豆大島の碁石浜)