水底堆積物
Volcanogenic Sediments under Water
 
 水底に堆積した火山灰には,陸上火山の噴火によるものと水底火山の噴火によるものがある.水底火山の噴火の場合,噴煙柱の上部が大気にまで達したものとそうでないものがある.これらの異なる噴火様式に対応する水底火山灰の識別方法はまだよくわかっていない.水圧を考えると,1000mを超える深海底に噴出したマグマ中の水が急激に気化して爆発的噴火が起こるとは考えにくい.
 よく成層した灰黒色泥岩の間に,大気底で噴火して海底に降り積もった火山灰が挟まれている.人物が観察している地層と,その上150cmにある地層がそれらである.

 白は火山ガラスの色であり,その中に混じる黒は鉱物結晶の色である.それらがつくる成層構造は,火山噴火のせいだけでなく,海水中を火山灰粒子が沈降する過程でもつくられる.

 上位の火山灰にみられる波打った層理は地震動による液状化で生じた.
(千葉県千倉町小松)
 無層理塊状の凝灰角礫岩の上を斜交層理をもった火山灰が覆う.それほど深くない海底で起こった一回の大爆発に対応する堆積物である.噴煙が大気中に出た証拠はない.
(静岡県松崎町堂ヶ島)
 火山豆石は大気中でしか生産されないから,この噴火の噴煙柱はまちがいなく大気まで達した.

 豆石の破片が多く見られることは,この火山灰が浅い水底に堆積したことを示唆している.もし深海だったなら,海底に達する前に豆石はバラバラの火山灰粒子に戻ってしまっていただろう.堆積物全体にわたって高温酸化の証拠がまったくないことも水底堆積の解釈に矛盾しない.写真中央に双子の豆石がある.
(青森県田子町遠瀬)

 円磨された軽石が濃集している.水中をしばらく漂ったあとで水底に堆積したのだろう.
(青森県新郷村長漕)


 前期更新世に沖浦カルデラから噴出した青荷凝灰岩.海底から噴出して(おそらく大気を経て)海底に堆積したらしい.

 軽石塊ばかりが濃集した直径10mにおよぶ巨大なブロックが火山灰のマトリクス中にいくつも浮かんでまるで世界地図のようだ.軽石塊の集積は水面で起こったのだろう.
(青森県平賀町井戸沢)
 深さ数十mの湖底にできあがったスコリア丘の断面.噴煙柱はもちろん大気まで突き抜けた.

 おおまかな成層構造がみえる.スコリア粒子は黒色でサイコロのように角張っていて,表面が水冷されてガラス質になっている.
(青森県十和田湖町の奥入瀬渓谷雲井林道入口)