7章 火山災害を防ぐ


「人類は自然災害を克服しようとして知恵を発達させ進化してきた」と,寺
田寅彦は今世紀初めに書いた.将来,技術力が向上して噴火を制御することが
できるようになると,火山噴火は人類に対する脅威でなくなるだろう.寺田寅
彦の考えによれば,そのとき私たちは進化の原動力のひとつを失うことになる
が,それが実現するのはかなり先のことである.いまの私たちは火山災害を防
ぐ努力を続けることによって,もうしばらく,知恵を発達させ進化しなければ
ならない.

(1)火山災害の種類

火山災害を引き起こす加害要因は次のように整理される:1)弾道岩塊・地
震・空震・津波などによる衝撃,2)熱雲・溶岩流・テフラ降下などによる高
温,3)テフラ降下・火砕流・溶岩流・ラハール・岩なだれなどによる埋積,4)
土地の隆起沈降による変形,5)火山ガス・細粒火山灰による大気汚染.これ
らのうちのいくつかは,噴火時でなくても発生する.火山災害のうち,噴火に
よって引き起こされる災害を噴火災害とよぶ.以下では噴火災害を重点的に取
り扱う.

多数の犠牲者を出した噴火事例を表7.1に掲げる.9万2000人の犠牲者が出
たタンボラ火山の1815年噴火が史上最悪の噴火であるが,噴火による直接的
犠牲者はその10%にすぎず,残りの90%は噴火後に発生した飢饉による餓死者
である.クラカトア火山の1883年の噴火では,3万6000人が津波に飲み込ま
れた.この津波の発生メカニズムは諸説あり,1)カルデラ陥没説,2)山体崩
壊による岩なだれ説,3)火砕流説などが提出されていて現在も論争中である.
プレー火山の1902年噴火では,5月8日の熱雲でサンピエール市民2万8000人
が,地下牢につながれていたひとりを除いて,全員焼死し,さらに8月30日の
熱雲で周辺村落の住民1000人が焼死した.アルメロ市のほとんどを埋めつく
したネバドデルルイス火山の1985年11月13日ラハールは,2万2000人の市
民の命を奪った.日本では,雲仙岳で1792年に発生した岩なだれと津波によっ
て1万5000人が犠牲となった.

このように,1000人以上の犠牲者を出した噴火災害の要因は,19世紀以前
の餓死を除けば,1)山体崩壊による岩なだれによる埋積と,それが水域に突
入して引き起こした津波によるもの,2)溶岩ドームの上昇に伴って発生した
プレー式熱雲によるもの,3)マグマや噴出物の熱によって火口湖が決壊した
り氷河や積雪が急速に融解して発生したラハールによるもの,の三つに分類で
きる.1000人以上の犠牲者を出す噴火災害は,地震災害とくらべると,まれ
にしか起こらないが,いったん発生すると被災地をほぼ完全に破壊しつくすの
が特徴である.

(2)噴火の予知

1910年7月,有珠山で有感地震が多発したとき,当時室蘭警察署長だった飯
田誠一は,これを噴火の前兆であると判断して,ただちに住民に避難勧告した.
翌日,彼はそれを避難命令に切りかえ,火山から半径約12km以内の地域の住
民を強制的に立ち退かせた.噴火はその翌日に始まった.これは,日本におけ
る噴火予知・避難がもっとも見事に行われた事例である.その後,有珠山では
1943年の噴火の際にも適切な処置が取られた.外国では,インドネシアのム
ラピ火山で,1957年の熱雲を発生の5時間前に予報して住民を退避させた事例
が成功例としてあげられよう.

大きな噴火には前兆現象が現れることが期待される.前兆現象には,地下水
や井戸水の水位・温度・化学組成の変化,噴気の活発化,地温の上昇,地形変
化,地鳴り,地震,動物の異常行動などがある.これらを観測するために地震
計・傾斜計・ひずみ計などが使われる.

浅間山では,深い地震と浅い地震が波形の違いによって区別できる.ブルカ
ノ式爆発の直前には浅い地震がしばしば多発するので予知できる場合がある.
浅間山では,深い地震はA型地震,浅い地震はB型地震とよばれている.

山岡耕春(1992)は,伊豆大島の1987年11月噴火の前に観測された山頂
直下の浅い地震の日別回数を調べ,その逆数をプロットするという簡単な方法
によって,11月中旬に突発的な出来事(すなわち噴火)が起こるだろうことを,
9月の段階で予測できていたことを,事後ながら,示した(図7.1).実際には,
噴火は11月16日に起こった.破局に向かって破壊が徐々に進むタイプの噴火
の時刻予知にはこの方法が有効である.

十勝岳の1988-1989年噴火と雲仙岳の1991年噴火では,爆発や熱雲の発
生時刻に約12.5時間の周期がみられた.臨界状態にあったマグマが潮汐力の変
化に感応して噴火に至ったらしい.古記録にかかれた伊豆大島の噴火開始日が
旧暦の朔日と15日に集中する傾向があることも,潮汐力が火山噴火のひき金を
引く場合があることを教えている.

形成途上の溶岩ドームが降雨によって冷却されて深い亀裂が入ると,落石に
よる崖錐形成が促されたり,ときにはプレー式熱雲の発生をみることがある.
この現象は雲仙岳で1992年8月ころにしばしば観測された.

噴火予知は開始時刻を予知することだけで完了するわけではない.むしろ,
噴火開始後の推移予測のほうがむずかしい.噴火のクライマックスがいつ訪れ
るか,そして最終的にどれくらいの量のマグマが噴出するかを予測することは
たいへんむずかしい.火山の地下で働いているプロセスがすべてモニターでき
るようになればそれは可能となろうが,機器観測で地下の状態を十分把握でき
るわけではない現状では,個々の火山の噴火履歴を事前によく調べておき,噴
火が始まったら,過去の事例の中から似たものを探して近未来を予測するとい
う応急的処置が力を発揮する.

噴火履歴はテフロクロノロジーによって調査される.その結果は,横軸に時
間,縦軸に噴出量をとった階段ダイアグラム(図7.2)で表現するとわかりや
すい.階段ダイアグラムは,遠い過去から続く時間の流れの中で現在がどのよ
うな状態に当たるかを表現しているから,長期的な見通しを立てるときに有用
である.小山真人・吉田 浩(1994)は,階段ダイアグラムに時間予測型・
噴出量予測型(図7.3)などの類型を認めて,火山の地下プロセスとの対応を
議論している.

火山で噴火が始まったとき,翌日あるいは一週間後に何が起こるかを予知す
るためには,現在進行中の噴火の状況を正確に把握することが欠かせない.目
の前で起こっている噴火を理解することなしに未来を予測しようとすることは
無謀である.噴火を観測して記述する目的のために,人工衛星・気象レーダー
による噴煙の観測,テレビや新聞で報道されるものも含めたビデオ映像とスチ
ル写真の解析,噴火堆積物の調査が積極的に推し進められる必要がある.


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ラバウル火山の1983年危機と1994年噴火

南太平洋に浮かぶニューブリテン島の北東端ラバウルは,14 km x 9 kmの
カルデラ地形を利用してその中にひらかれた美しい港湾都市である.1971年
からこのカルデラ内で地震が群発するようになり,毎年およそ10cmの割合で
カルデラ底が隆起しつづけた.地震の回数と規模はしだいに増大していき,
1983年8月には地震回数が急増して隆起も加速した.この群発地震と隆起の原
因は,地下1.5km〜3kmにある二つのマグマだまりが10^6m^3/月の割合で膨張
しているからであると,当地の火山学者によって解釈された.これを受けて,
大きな噴火がまもなく起こるのではないかとする心配が生まれ,カルデラ内に
住む7万人の避難が行政によって真剣に検討されるという深刻な事態に立ち至っ
た.しかし,幸いにも地震は1984年4月をピークに減少し始め,隆起も同年
12月以降沈静化して,結局噴火は起こらなかった.もっとも大きかった地震の
マグニチュードは5.1であり,1983年9月から1984年12月までの隆起量の合
計は63cmだった.

ラバウルでは,住民に噴火の危険を知らせる警告が四つのレベル(1〜4)に
分けられている.この危機のときは,1983年10月から1984年11月までレベ
ル2が維持された.レベル2とは数ヶ月ないし数週間以内に噴火が起こるかも
しれないとする警告である.レベル3以上の警告はこの危機では出されなかっ
た.

1994年の噴火は9月19日から始まった.タブルブルの噴火は6時5分,ブル
カンの噴火は7時17分から始まった.ブルカンの噴火のほうが激しく,開始直
後にプリニー式噴煙柱を立ち上げた.ブルカンは10月2日に噴火を止めたが,
タブルブルは前回(1937年)同様しばらく噴火を継続して12月まで活動を続
けた.

この噴火の27時間前,18日2時51分に起こったマグニチュード5.1の地震以
後異常な地震活動が続いたため,行政は同日18時15分にレベル2の警告を出し
ていた.これを聞いた市民はただちに避難を開始した.レベル3の警告(数日
から数週間以内に噴火が起こるかもしれない)も19日未明に用意されたが,避
難が順調に行なわれていたため発表されなかった.こうして,噴火はほとんど
の市民が安全な場所へ避難し終わったあとに起こった.

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(3)火山の噴火危険度評価

巨大噴火の危険  それほど遠くない過去に,噴火マグニチュードが7.0を
超える巨大噴火があったことを私たちは前節で知った.その数は,第四紀後期
の13万年間に日本だけでも10回を数える.文字文化が生まれる前に起こった
噴火災害を数量的に把握するために,過去に起こったと同じ災害がいま起こる
と仮定したときに失われるであろう人命の概数をその噴火の災害度とよび,災
害度を事件の発生年代で割ったものを潜在脅威とよぼう.阿蘇カルデラから8万
7000年前に起こった阿蘇4火砕流の噴火(M8.4)の災害度は500万であり潜在脅
威は57である(表7.2).姶良カルデラから2万8000年前に起こった入戸火砕
流の噴火(M8.3)の災害度は300万であり,潜在脅威は115である.潜在脅威は,
1年当たりの平均死者数と思ってよい.

巨大噴火の発生頻度は日本で1万年に1回程度,グローバルでも1000年に1
回程度と低いが,いったん発生すると数十万から数百万もの人命が失われる.
潜在脅威によって示される1年当たりの平均死者数もけっして小さくないから,
巨大噴火に防災対策を施すことがまったく無意味であるとはいえない.しかし,
現在の社会システムと政治のしくみの枠のなかに留まって考える限り,火山の
時間スケールと人間の時間スケールの違いが大きいことに気づかずにはいられ
ない.

現在の日本では,毎年1万人当たり約1人が交通事故で死亡している.個人の
側からみると,交通事故に遭遇して死亡する確率は約1万年に1回であるから,
過去1万年間に深刻な火山災害が起こったことがある地域の住民を守るための
防災対策は,交通事故防止と同じくらい熱心になされていいのかもしれない.

火山のリスト 日本では気象庁が,(1)過去およそ2000年以内に噴火し
た火山,または(2)噴気活動が活発な火山,という基準で活火山を選定して
いる.その総数は83である(ただし「南硫黄島南東沖海底火山」は延長
300km以上の火山列をさす).

火山の時間スケールで考えると,2000年という時間の長さは活火山の認定
のためにはやや短いように思われる.たとえばフランシス(P. Francis, 
1993) は,過去1万年以内に噴火した証拠をもつ火山を潜在的に活動的
(potentially active)とみなそうと提案している.世界の火山カタログを作
成・更新しているスミソニアン博物館は過去1万年間の噴火を収集している.
過去1万年間は完新世とよばれる時代だから,その期間に噴火した証拠がある
火山を完新世火山とよぼう.気象庁の活火山83に,沼沢沼・高原山・燧ケ岳・
三瓶山・口之島などの十数山を追加した約100が日本の完新世火山の総数であ
る.

噴火災害を防ぐ努力を効果的に(経済的に)遂行するためには,完新世火山
ひとつ一つの危険度を客観的基準によって相対評価する必要がある.潜在脅威がほ
とんどゼロに等しい火山に防災対策を施すのは無駄であり,潜在脅威がきわめて
高い火山を放置するのは怠慢である.顕著な噴火はもれなく堆積物の分布を調
べて災害度と潜在脅威を測定したい.完新世に起こったすべての噴火の年代とマ
グニチュードを決定することができれば,より確かな評価が可能となる.

(4)火山防災のための対策 

ハザードマップ 火山災害を受ける危険がある区域を図示したハザードマッ
プを火山ごとに用意しておくと防災に有効である.ハザードマップには,住民
の避難を目的としてつくられるものと,安全な土地利用を目的としてつくられ
るものとの二種類がある.

避難目的でつくられるハザードマップは,特定の噴火を想定して,それによ
る災害を受ける地域を図示したものである.火砕流・ラハール・溶岩流などの
流れ災害を受ける領域は,マグマ噴出率と地形に支配される.降下テフラによ
る災害を受ける領域は,マグマ噴出率と大気条件に左右される.いずれもコン
ピュータによるシミレーションで被害区域を予想することができるが,被害の
大小を大きく左右する到達距離はマグマ噴出率に大きく依存するので,マグマ
噴出率を仮定したシミレーションに過度の期待を寄せることは避けなければな
らない.

安全な土地利用を目的とするハザードマップは,その火山の噴火履歴をよく
知った上でつくられなければならない.過去の災害実績を統計処理して,災害
の発生確率を付すとよい.図7.4図7.5は,浅間山と榛名山のハザードマップ
である.それぞれの被災領域には,1年以内に発生する確率が1/10から
1/300,000までの範囲で付されている.これに加えて,それぞれの発生確率
に対応した想定噴火シナリオが詳しく記述されれば,土地利用目的のハザード
マップとしては万全である.

防災施設の建設 現在の技術では火山噴火を止めることができないから,
私たちは,災害を受けやすい地域にあらかじめ防災施設を作っておくことで火
山災害から逃れるしかない.弾道岩塊の射程距離内にある観光施設にはコンク
リートシェルターが設置されている.雲仙岳では,熱雲の危険のなかで作業を
する必要があったので,巨大な冷凍冷蔵庫をおいて緊急避難場所とした.大円
錐火山の山腹には,ラハールによる被害を軽減するため,砂防ダムがたくさん
設置されている.破壊力が大きい巨礫だけを止めて,砂や水は下流に流してし
まうスリットダムという巧妙な施設も考案されて効果を上げている.しかし,
ダムでラハールを完全に止めることはむずかしいから,谷の上流部に電線を張
り,ラハールによってそれが切断されたらただちに信号が下流の住民へ送られ
るようにした泥流センサーが開発されて,十勝岳1988-1989年噴火などで使
われた.

溶岩流の制御 噴火を止めることはできないが,玄武岩溶岩流の場合は,
一定範囲内での制御が可能である.アイスランドのヘイマエイ島で1973年に
起こった噴火のとき,港の開口部を塞ぎそうになった溶岩流に海水を放水して
前面を強制的に冷却固化させて,溶岩流の前進にブレーキをかけ,港を守るこ
とに成功した.三宅島1983年噴火,伊豆大島1986年噴火でも,玄武岩溶岩流
へ同じような放水が小規模ながら実施された.イタリアのエトナ火山では溶岩
流へ爆弾を投下して流れを変える試みが検討されたことがある.

人為によって溶岩の流路を変更すると,変えられた流れによって被災した住
民に訴えられる心配がある.また,溶岩流前面での爆発を誘発しないかどうか
を放水の実施前に慎重に検討するべきである.

気象庁による火山の監視と火山情報の発表 日本では,毎年約10の火山で
噴火や異常現象が発生している.気象庁では,19の活火山について地震計やそ
の他の観測施設を設けて常時観測を行い,その他の活火山については火山機動
観測班が定期的に巡回して基礎調査を行っている.火山機動観測班は,火山で
異常が発生したらすみやかに現場へ向かって緊急観測を行う役目も負っている.
こうして得られた観測結果と,大学や研究機関などから得た情報に基づいて,
気象庁は,国民の生命や身体などを火山災害から守るために,火山情報(表
7.3)を発表する.火山情報は,地元の気象台・測候所および気象庁本庁から
発表され,テレビやラジオ,市町村などを通じて国民ひとり一人に知らされる
しくみになっている.たとえば,桜島の火山情報は鹿児島地方気象台から,浅
間山の火山情報は軽井沢測候所から,伊豆東部火山群の火山情報は気象庁本庁
から発表される.

緊急時の意思決定と情報の伝達 火山噴火による災害が発生したときには,
災害の状況に応じて,市町村,都道府県,さらに国に,災害対策本部が設置さ
れて,災害応急対策の迅速かつ的確な推進が図られることになっている.各省
庁などからなる29の指定行政機関は,国土庁を取りまとめ役として,災害対策
の実施にあたる.また災害対策基本法は,日本電信電話株式会社・日本銀行・
日本赤十字社・日本放送協会その他の公共機関および電気・ガス・輸送・通信
その他の公益的事業を営む法人を指定公共機関として,それらの機関が災害対
策に特別の役割を果たすことを期待している.現在は37機関が指定されている.
火山専門家と防災にかかわる行政官からなる火山噴火予知連絡会は,測地学
審議会の建議に沿って1974年に組織された気象庁長官の私的諮問機関であり,
よるべき法的根拠はとくにないが,伊豆大島1986年噴火や雲仙岳1991年噴火
などの経験を通して,現在進行中の噴火現象についての総合判断を下す国の最
高意思決定機関であると社会に認知されるようになった.

火山防災は,火山専門家・行政官・ジャーナリスト・住民の四者間の情報伝
達がうまく機能したとき初めて成功する.ここでジャーナリストが果たす役割
はきわめて大きい.新聞・雑誌などの印刷メディアに属するジャーナリストと,
テレビを活躍の場とする放送ジャーナリストは,それぞれのメディアの特性を
生かし,良識をもって積極的に,災害情報を住民に伝えてほしい.火山の知識
を一般に普及する努力を平素から行っておくと,緊急時の情報が住民にうまく
伝わりやすい.

(5)火山の恵み

万葉集の時代から富士山は多くの和歌に詠まれた.その秀麗な姿に古来から
日本人はつよく心を引きつけられてきたのである.地方には,それぞれの地方
名を冠して○○富士と愛称される火山が多数ある.支笏湖や十和田湖は,大規
模火砕流を噴出したカルデラの中に水がたまってできた湖である.中禅寺湖は,
男体山の溶岩流によってせき止められて生じた.火山とそれがつくった湖の景
勝は,美しい日本の風景の代表である.

ニュージーランドやアイスランドでは,火山の熱を使った地熱発電が盛んで
ある.アイスランドでは,人口数百人の小さな村にも,地熱で温めた水をつかっ
たプールがあって村民の健康と娯楽のために利用されている.日本での地熱発
電は限られた地域でしか実用化されていないが,見方によっては,私たちは温
泉としてその熱資源を最大限有効利用しているといえよう.

大規模な火砕流・ラハール・溶岩流は,台地をつくって平坦面を私たちに供
給する.その上には火山灰を母材とした肥沃な土壌が形成されて,畑作に適し
た土地となる.海山や火山島は豊かな漁場を提供している.伊豆-マリアナ弧
にはそうした漁場が多い.

火山は,ともすれば噴火の脅威だけがクローズアップされがちだが,日本人
の心に古くから刻み込まれ,私たちの日常生活を足元から支えている存在でも
ある.


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