朝日新聞(群馬)10月1日朝刊より

16日の噴火以降 危機感
県、具体的基準持たねば


噴火の見通しや今後の課題を、群馬大学教育学部の早川由紀夫教授(火山学)に聴
いた。

現状と見通し

 気象庁は活動レベルを「3」としているが、本来はレベル4だ。レベル4の条件は
「山頂火口から3キロ以遠に噴出物降下」「空振の影響の可能性」。4キロ地点で石が見
つかっているし、火山博物館のガラスは空振で割れた。レベル4の例となっている50年、
73年の噴火に、今回は似ている。

 最初の噴火時点では私も楽観していた。だが、16日の噴火以降、危機感を持った。
軽井沢に降った灰を顕微鏡で見たら、ほとんどが軽石だったからだ。軽石が大規模な
噴火につながることは、火山学者の常識だ。それ以降の噴火はもとに戻ったが、また
軽石が出てくるようなら、火砕流を伴う大噴火に発展する可能性がある。今はどうな
るかわからない状態だ。

行政の対応

 長野原町と嬬恋村は、火口から4キロ以内の立ち入りを規制している法的根拠と、
4キロ以内にある火山博物館の営業を許す理由を示してほしい。しかし町村にそこまで
求めるのは酷かもしれない。県のリーダーシップに期待したい。警戒区域の設定などに
ついて、火山噴火(爆発)防災計画では「必要に応じ」「特に必要があると認めると
きは」と書いているだけ。具体的な基準を定めてほしい。規制の検討委員会を開くな
どする長野県と比べて、出遅れている。

住民がすべきこと

 住民は、基本的には今の暮らしをしていい。ただ、子どもには気を使う必要がある。
通学にはヘルメットをかぶらせるなどした方がいい。これまでの噴火は夜間か雨の
時に起きている。多くの人が外にいる最中に石が降ることはなかった。だからみな、
油断している。

 夜、赤いマグマに噴煙が照らされ、神々しく光る火映を見てほしい。
肌身で火山を感じれば、どこまで危険かわかってくるはずだ。