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ランキンぐんま

【防災力】

天災少なく備え後手に

2008年02月21日

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地上約2メートルのコンクリートの上にセンサーが設置され、東西南北と上下6方向の揺れを記録している=前橋市昭和町3丁目の前橋地方気象台で

 総務省消防庁が47都道府県の「防災力」を調べて100点満点で点数化した「地域防災力・危機管理能力についての自己評価」で、群馬県は03年度の調査で全国平均(43・5点)を大きく下回る25・7点となり、「最下位」と発表された。

 調査では防災と危機管理能力について地震、風水害、原子力災害、テロ対策など約800項目にわたり尋ねられた。

 当時の資料や県消防防災課の説明では、点数が低くなった理由は▽大災害が少ないため「災害の被害や原因調査」を「ほとんどしていない」と答えた▽海や原子力発電施設、大規模な石油コンビナートがなく、津波や放射能汚染など対策が取りづらい災害で「対策をとっていない」と答えた――との点があるという。

 「配点基準も分からず、公表されるとも知らなかった」などとして、県は公表直後に消防庁に抗議した。消防庁が非公式に「評価が低く出た県に迷惑をかけた」と、謝罪ととれるメールを送ってくる騒動も。

 その後の05年度にあった2度目の「防災力」調査では、群馬は中越地震での支援実績を積むなどして、全国平均(58・5点)を上回る60・3点で19位に浮上、なんとかメンツを保った。

 さて「災害や災害につながる事象が少ない」というのは、確かに事実に即している。

 地震について気象庁のデータベースを調べたら、群馬県は、記録の残る過去82年間で、震度3以上の地震が154回(2月11日現在)しかなく、関東1都7県では最も少ない。逆に最多は東京都で2284回。リスクの多い東京は、防災力ランキングでも常にトップクラスに位置する。

 阪神淡路大震災を受けた県の活断層に関する調査でも、藤岡市付近の平井断層などについて「圧倒的に断層の数が少なく、活動の度合いも低かった」という。

 昨年10月には、損害保険料率算出機構が決める地震保険の基本料率に関する4段階の等地区分が、群馬は「2」から最も低い「1」に引き下げられた。

 災害の中で、地震は確かに少ない。ただ、群馬大教育学部の早川由紀夫教授(火山学)の調べでは、菅原道真が編さんした「類聚国史(るい・じゅう・こく・し)」に、818年に「上野国等の境、地震災を為(な)し……」との記述があり、赤城山南面を中心とした関東全域を襲う震度7クラスの内陸地震が起きたことが分かっているという。

 また20世紀以降に群馬県を襲った自然災害で死亡した人の数は、地震が5人に対し、火山に関連する災害が約30人、水害は約800人に上る。地震が少ないからと言って「災害がない」とは言えず、むしろ地震以外では危険にさらされている。

 話を元に戻したい。市町村がとっている対策も含めて群馬県の「防災力」が、あるのかないのかについては、客観的に示すのはなかなか困難なようだ。

 例えば昨年9月の台風9号の被害に関連した県議会の一般質問では、高齢者や障害者らに対する「災害時要援護者支援」の計画を策定している市町村がゼロだったことが明らかになった。逆に公共施設の耐震化率(06年度調査)は、県立施設が79%などと全国11位の高いランクに入っている。

 何千〜何万年に1度起きるか起きないか分からない天災に、どこまで税金や努力を費やすべきかは、議論が分かれるところだ。ただ県は、04年時点で群馬県を含めて10県だけが設置していなかった「部次長級以上の防災・危機管理専門職」を、遅まきながら08年度から新設する予定だ。行政の組織的な危機管理意識の変化は少しずつ始まっているようだ。(雨宮徹)

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