Heinrich events 地学セミナー

ハインリッケイベント---更新世末期の寒冷化事件

Heinrich eventsは,Heinrich (1988)によって初めて発見されました.大西洋の深海底コア試料に,漂流してきた氷山が落としたと思われる砂礫がとくに多く含まれる層準がいくつかあって,それらは複数コア間で対比することが可能です.炭素含有量や有孔虫の量の変化にも系統性があります.

これは,カナダ東部から大量の氷山が北太平洋に押し出してきたことの結果だと考え られています.そのとき,地球がきわめて寒冷化したと判断されます.Heinrich eventsは,だいたい1万年の間隔で起こっています.これはミランコビッチサイクルでは 説明がむずかしいそうです.天文学的原因ではなくて,氷床自身の理由によって起こ ったのかもしれない.

Heinrich eventsと,グリーンランド氷床コアにみられる酸素同位体比の変化パターン(Dansgaard-Oeschger (D-O) eventsという),それから陸上のproxy records(山岳氷河・湖水レベル・花粉・レス)をグローバルに対比しようとする研究は,いまの global climate change研究のトレンドのようです.

寒冷化事件のリストを以下に示します.

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YD 12.0 ka (calendar age)
H1 16.5
H2 23.0
H3 29.0
H4 37.0
H5 50.0?
H6 70.0?
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YD: Younger Dryas
H: Heinrich event

Hは,最後の寒の戻りであるYDと同様のものを過去に遡っていくつも認識したという ことに相当するらしい.

さて,日本のテフラの中には,テフラ自身の性質やテフラ直下のレスの性質が寒冷気 候を示唆するものがいくつかあります.たとえば,屈斜路西別東カヤノ・十和田八戸 ・浅間離山雲場です.姶良丹沢の直下もそうかな? それらの年代が上のYDやHの年 代とあうかどうかはおもしろい研究テーマだと思います.

文献
Heinrich H (1988) Origin and consequences of cyclic ice rafting in the northeast Atlantic Ocean during the past 130,000 years. Quaternary Research, 29, 142-152.

Bond G et al. (1992) Evidence for massive discharge of icebergs into the North Atlantic ocean during the last glacial period. Nature, 360, 245-249.

Bond G et al. (1993) Correlations between climate records from North Atlantic sediments and Greenland ice. Nature, 365, 143-147.

Boecker WS (1994) Massive iceberg discharge as triggers for global climate change. Nature, 372, 421-424.


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