(2)2時間目 

 

@テーマ 火山噴出物とマグマ

 

Aねらい

  パン皮火山弾,軽石,溶岩,火山灰を観察し,もとのマグマについて考察できる。

  

B学習内容

噴出物からマグマ中の鉱物結晶や揮発性成分の様子がわかる。

 

C展開

 

準備 カルメ焼き作成用具一式 パン皮火山弾 軽石 溶岩 溶岩薄片 火山灰 偏光顕微鏡 光源装置

   スライドガラス カバーガラス デジタルカメラ(AV出力用具) テレビ又はプロジェクター

 

主な学習活動

教材・資料

教師の支援と留意点

軽石やパン皮火山弾のでき方を考える。

〔カルメ焼きのでき方を見る〕

 

 

 

〔パン皮火山弾とカルメ焼きの似ているところに気づき,でき方を考える〕

 

 

〔軽石とカルメ焼きの似ているところに気づき,でき方を考える〕

 

 

パン皮火山弾

  草津白根山

軽石

  浅間山1783年噴火

 

カルメ焼きを演示

 

 

 

 

 

 

 

 

各班に,火山礫,軽石,火山灰を配る。

パン皮火山弾と軽石を生徒に見せ(触らせ),「これから,パン皮火山弾と軽石をつくります。今日使うのは,マグマではなくて砂糖です。」と前置きをして作り始める。

 

●パン皮火山弾の表面のひびは,マグマの表面が冷えて固まり,さらに膨らむことによってできたことに気づかせる。

 

●軽石の多孔質は,マグマがふくらんでできたことに気づかせる。

 

軽石とパン皮火山弾を触ったりルーペで観察させ,時間があればスケッチさせる。

 

溶岩や火山灰を観察する

溶岩薄片と火山灰プレパラートの偏光顕微鏡像

 

デジタルカメラのAV出力を利用して,偏光顕微鏡像をテレビ画面に投影して生徒に示す。

 

実演しながら,テレビ画面に映して見せる。

 

●溶岩や火山灰には,鉱物が含まれていることを知らせ,これらがマグマ中にあったことを理解させる。

 

噴出物とマグマの関係をワークシートにまとめる。

 

 

 

D教材

 

【教材1】 パン皮火山,弾軽石

 

5-1 パン皮火山弾

 

長径約18cm

群馬県 草津白根山

 

安山岩質のマグマによるブルカノ式噴火によってごくふつうに生じる。飛行中に冷却されて固まって表面にガラス質の皮膜が生じるが,内部はまだ高温で発泡を続けるため,いったんできた皮膜が破れて亀裂ができる。

「フィールド火山学」より

http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/kazan/field/

 

 

5-2 軽石

 

長径約12cm

長野県 浅間山 1783年噴火による 

 

 噴煙柱内では,空中に噴き上がったマグマが揮発性成分の発泡によって膨張し,多孔質の軽石になって降下する。

写真の軽石には,水飴を引きのばしたような繊維状の構造も見られる。

 

 

【教材2】カルメ焼き

6 カルメ焼き

加熱して水飴状になった砂糖に卵白と練り合わせた重曹を入れてかき混ぜると,発生した炭酸ガスによって膨らむ。

 先に冷え固まってできた被膜が膨張によって破られ,表面に亀裂が生じる過程が,パン皮火山弾の亀裂の生じる仕組みと同じである。

また,カルメ焼きを切ると,発泡によって生じた軽石のような多孔質構造が見られる。軽石にも見られるこの構造が,マグマ内に溶けていた揮発性成分の発泡によってできたことを容易に想像させてくれるモデル実験である。

ただし,カルメ焼きの膨張は炭酸水素ナトリウムの加熱分解で生じた二酸化炭素によるものであるのに対して,マグマの場合は揮発性成分(主に水)の減圧発泡によって生じた水蒸気である。前の授業のコーラ噴火・簡易真空器とサイダーのモデル実験と関連させると,この点を理解させやすい。

 

 

カルメ焼きの作り方

 

材料 砂糖(上白糖40g) 重曹卵(重曹6g,卵白2g,砂糖1g 15cc

 道具 おたま 温度計(200℃計,又は料理用温度計) 割りばし 卓上コンロ 乾いた布巾 ぬれ布巾

 

@重曹卵の準備 卵白に重曹を加えてシャーベット状になるまでぐりぐりとよくかき混ぜる。そこへ砂糖1gを加えてかき混ぜておく。

Aおたまに砂糖と水を入れ,かき混ぜながら中火で加熱する。温度が110℃位を超えると上昇速度が速くなるので弱火にする。(無色透明から黄色みを帯びた水飴のようになり,ねっとりしたあわが生じる)

B130℃位になったら,火から下ろして乾いた布巾の上に置く。

C砂糖水から泡が出なくなるまで静かに20秒ほど待つ。浮いている泡も小さくなったら大豆ほどの大きさの重曹卵を割りばしの先につけて加え,その割りばしで一気にぐりぐりとかき混ぜる。

D20秒ほどかき混ぜていると急激にふくらみかけ,混ぜている割りばしの軌跡がわかるようになる。

Eおたまの底が見えるくらいになるまで休まずに混ぜ合わせたら,割りばしをそっと抜いて待つ。10秒ほどで盛り上がってくる。

F膨張がやんだらぬれ布巾の上におたまを置いて急冷し,中まで冷え固まるのを待つ(数分)。

Gおたまの底の部分を再度弱火であぶると,カルメ焼きの下の部分がとけて取り出しやすい。

 

参考:「もう失敗しません『カルメ焼き』」http://www.ajiwai.com/otoko/make/karumeyaki.htm

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【教材3】岩石薄片,火山灰プレパラートの偏光顕微鏡像

 

 双眼実体顕微鏡や生物顕微鏡でも鉱物の粒を見ることができるが,それが鉱物(結晶)であるということは生徒には理解しがたい。偏光顕微鏡を用いると,鉱物(結晶質)とガラス(非晶質)の見分けが容易であることを利用して,溶岩薄片と火山灰の中に鉱物を見いださせようと考えた。

  検定済教科書では,火成岩や火山灰の中に鉱物が見られることを指摘ながら,鉱物がマグマの中に噴火前からあったことを明確にしていない。この観察を通して,鉱物結晶が噴火以前からマグマの中にあったことを想像させたい。

 

      

7-1 溶岩と岩石薄片             7-2 偏光顕微鏡像(平行)         7-3 偏光顕微鏡像(直交)

       

7-1は,浅間山200491日噴火の火山礫とその薄片である。写真の火山礫は,9 1日の噴火で吹き上げられて,火口から約5.5km離れた地点に降ってきたものである。

この薄片を偏光顕微鏡で見たものが図7-27-3である(40倍で見たときの写真)。生徒には,接眼部をコンパクトデジタルカメラでのぞいたものをAV出力機能でテレビ画面に映して見せる。生徒全員に同時に映像を見せることができる。しかも,教科書や資料集の写真よりも教師の実演と相まって臨場感を持って見せられる。また,必要に応じて,カメラのRECPLAYを使い分けることができる。

はじめに平行ニコルで生徒に見せ,肉眼で見える白や黒い粒がこんな角ばった形をしていることを説明し,肉眼での見た目と顕微鏡像の印象をつなげてやる。次に,「この偏光顕微鏡は,結晶を見分けることのできる特別な装置の付いた顕微鏡です。90度ずらした二枚の偏光板が中に入っています。このままでは真っ暗ですが、結晶には複屈折という性質があるので、二枚の偏光板の間に結晶を入れると一部の光が通過して色がついて見えます。」と,実演しながら偏光顕微鏡の説明も加えて説明する。また,岩石をつくっているこのような結晶を「鉱物」と呼ぶこともここで教えられる。

 

8-1 火山灰

浅間山 200491日噴火

中之条(火口から北東約35km)に降ったもの

 

 

 

8-2 火山灰の顕微鏡像

8-1を顕微鏡で拡大したもの(40倍)を撮影

偏光顕微鏡のステージに斜め上から光を当て反射光で見ると,実体顕微鏡と同じ象が得られる。

大小さまざまな大きさの粒子が集まってくっついている。

 

8-3 火山灰(反射光)

 

8-1をふるいに掛けておいたものをスライドガラスにのせ,反射光と反射光で検鏡(40倍を撮影)。

粒径1/41/8mm

 

 粒子がそろい,一粒一粒の様子がわかりやすい。岩片,鉱物結晶,軽石ガラスが見られる。

 

8-4 火山灰(平行ニコル)

 

8-3を透過光で平行ニコルで検鏡(40倍を撮影)

 

カバーガラスを掛けてカバーガラスの縁に水を滴下すると,カバーガラスとスライドガラスの隙間に水が入っていき,火山灰プレパラートになる。粒径がそろっていて観察しやすい。 

8-5  火山灰(直交ニコル)

 

8-4を直交ニコルで検鏡

40倍を撮影)

 

 鉱物結晶だけが明るく見える。

岩石薄片と違って,鉱物の厚さが一様ではないため干渉色が見えている。生徒には干渉色の説明はしない。