ブログによる群馬の火山地形紹介

金井 智之

 

1 はじめに

 ブログとは、個人運営で日々更新される日記的なWebサイトの総称であり、ウェブ・ログ(Web log)が省略されてブログ(Blog)と呼ばれるようになった。運営が容易であり機能が充実していて、近年新しいメディアとして注目されている。

今回、ブログを活用して、多くの人に地学への関心を高めてもらったり火山の知識を深めてもらうことを目的とした群馬県中心の火山地形の紹介と案内を20063月から20071月まで行った。本稿では、ブログによる火山地形紹介の実践報告と、火山地形紹介におけるブログの有効性の考察を行う。

 

 

2 ブログの特徴

 ブログはホームページの形式の一種である。だが、従来のホームページとは違い、記憶スペースやアプリケーション・プログラムが自分のパソコンではなくネット上にある。一般的にネット上の無料のブログ向けソフトウェアを借りてきて、管理人登録をして運営を開始する。こうしたソフトウェアを使用すれば、複雑なHTMLを知らなくても手軽に情報の発信や更新が行える。

最新の記事を最初のページに表示するので、非常に読みやすく、検索機能や「最近の記事」のリストが標準でついているのでバックナンバーを探すのも簡単である。他にも、従来とは逆に、別の管理人が作成したページから自分のページにリンクする「トラックバック」機能や、携帯電話からメールで記事を更新する「モブログ」機能など、最新の機能が沢山あるのもブログの特徴である。

 

 

3 実践報告

3.1 作成ブログURL

「泰然自若」URLhttp://mechibonn.blog62.fc2.com/

 

 

 

 

 

 

 


1 ブログトップページ

 

3.2 使用ブログ

多くのブログ向けソフトウェアの中から、無料ブログランキング1位の「FC2ブログ」を選んだ。ブログは、借りてきたソフトウェアによって機能が違ってくるので、慎重に選ぶ必要がある。無料ブログ選びには、「ブログ比較」というサイトが便利である。

FC2ブログ」

URLhttp://blog.fc2.com/

「ブログ比較」

URLhttp://www.boraro.gozaru.jp/blog._guide.html

 

3.3     記事の作成手順

@:インターネットや文献で火山地形のある場所を調べ、その場所についての予備知識をつけ、現地で観察をするポイントをしぼる。

A:実際に現地へ行き、地形の様子・その場所へのアクセス方法・観察する上での注意点をチェックし、地形の様子をデジカメで撮影してくる。

B:地形の特徴・周辺の様子・観察する上での注意点などを、撮影してきた写真や現地へ行ってみた感想を交えてブログに書き込む。

 

3.4     ブログの工夫点

 ブログを作成する上で工夫した点を以下に記載する。

 

@    火山地形調査以外の記事の掲載

ブログのメディアとしての性能を生かし、火山地形紹介以外に研究室で行った活動の宣伝をするために活動の様子を記事にして紹介を行った。

 

A    カテゴリー分け

FC2ブログ」には、記事を内容ごとにカテゴリー分けする機能がある。今回の実践では、調査した場所・活動の内容ごとにカテゴリーを分けた。カテゴリー分けすることにより、記事が整理しやすくなり、また下記で説明する案内板の作成にも役立った。作成したカテゴリーを以下に記載する。「浅間山SPP」「サバイバルメシタキ」「コーラ噴火実験」「弁当パック立体模型」は、火山地形調査以外のカテゴリーである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


B    案内板

記事の数が増えるに従って、記事の内容ごとに整理する必要がでてきた。また、ブログの特性上最新の記事には関心が集まるが、過去の記事にはあまり関心が集まらないということがわかった。そこで、上記のカテゴリーを内容ごとにさらに大きなカテゴリーとしてまとめてリンクし、案内板としてブログのトップページに掲載した。記事は「火山調査」「SPP」「その他の火山地形調査」「岩脈調査」「その他の活動」「その他の写真」の6つの大きなカテゴリーに分けた。また、案内板には大きなカテゴリーの説明と、そのカテゴリーにどんな記事が含まれているのかがわかるようにキーワードを記載した。

 

C    写真

地形の様子を捉えやすくするよう、現地でデジタルカメラを用いて写真を撮影し、記事と一緒に掲載することにした。しかし、「FC2ブログ」では記事内にアップロードできるファイルが500KBまでなのに対して、デジタルカメラで撮影した写真は850KB程になってしまう。そこで今回は、画像の大きさやサイズを簡単に縮小できる「縮小専用。」というフリーソフトを使用した。見やすさなどを考慮して、画像の大きさは800×600に、サイズは250KBに統一した。

「縮小専用。」

URLhttp://i-section.net/software/shukusen/

 

D    用語辞典

火山地形の調査内容を記事にしようとすると、どうしても少し難しい火山用語を使わなければならない。そこで、難しい火山用語を大半の人がわかるように説明する用語辞典をブログ内に作成し、難しい火山用語が出てくるたびに用語辞典へのリンクを取りつけた。

 

E    地形の周辺地図のリンク

火山地形が見られる場所への行き方がわかるように、主要道路からの道のりを記載したのだが、文字だけではわかりづらいだろうと思い、記事から地形の周辺地図にリンクした。周辺地図は、「マピオン」という無料のソフトウェアを使用した。

「マピオン」

URLhttp://www.mapion.co.jp/index.html

 

F    ランキングへの参加

大半のブログには、ランキングという無料サービスがついていて、「FC2ブログ」にも「FC2ランキング」というサービスがある。ランキングは、登録ブログからランキングサイトへのアクセスを集計してランキング形式で表示するサービスである。ランキング順位は、同じような趣旨のブログごとに表示される。このサービスを利用することにより、似たようなことに興味をもった人たちに自分のブログを宣伝することができる。今回は、「アウトドア」と「自然科学」のランキングに参加した。

 

G    データーのバックアップ

ブログは記憶スペースがネット上にあり、ネット環境に問題が生じるとブログに書き込んだ記事のデーターがすべて失われてしまう危険性があるので、記事のデーターが失われないようにバックアップデーターを作成しておく必要がある。「FC2ブログ」には、バックアップツールがあるので、画像以外の記事のデーターは容易に作成できる。

 

H    PDFファイルの掲載

 浅間山SPPとコーラ噴火実験の記事に興味をもっていただいた人に、それぞれ浅間山火山見学とコーラ噴火実験を手軽に行ってもらいたいと思い、「浅間山火山ガイド」と「コーラ噴火実験マニュアル」をWordで作成し、PDFファイルとしてブログに掲載しようとした。しかし、「FC2ブログ」にはPDFファイルを掲載できる機能がない。そこで、別に作成したホームページからPDFファイルをネット上にアップし、そのHTMLをブログに貼り付けることによって「浅間山火山ガイド」と「コーラ噴火実験マニュアル」を掲載することができた。

 

 

4 アクセス解析

アクセス解析とは、サーバに日々蓄積されているアクセスデータを集計しグラフなどにして分析することができる機能のことである。アクセスしてきたユーザーがどのようなワードで検索して訪れたかや、どのページを経由してアクセスされたか、時間帯別の訪問者数などが解析できる。今回の実践で作成したブログのアクセス解析結果(200669日〜200718日)を以下にまとめる。

 

4.1 検索ワード

アクセスしてきたユーザーが、検索エンジンを使いどのようなワードで検索して訪れたかを日にちごとに解析する。月ごとの解析ワードをまとめて表にした。(表−18参照)

 表を見ると、今回の実践で作成したブログにはどのような検索ワードで導かれる人が多いのかがわかる。月ごとに検索ワードが様変わりしており、その月に掲載されたばかりの記事に含まれているワードが検索されやすくなっている。

 10月・11月を中心に片品渓谷という検索ワードが多いのが目につく。今回の実践で作成したブログ以外に片品渓谷について詳しく書かれたサイトが存在していないことが検索数が多くなった原因だと考えられる。

 関連する検索ワードが多い地形と少ない地形がみられるが、関連する検索ワードが多くなる要因としては、ブログ内にその地形に関する記事が多い・その地形に対して興味を持っている人が多い・当ブログの他にその地形について取り上げているサイトが少ない等が考えられる。

 

 

2 7月の検索ワード

 

1 6月の検索ワード

 

 

 

 

 


                                                                                                                 

4 9月の検索ワード

 

 


3 8月の検索ワード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6 11月の検索ワード

 

5 10月の検索ワード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8 1月の検索ワード

 

7 12月の検索ワード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


4.2 訪問者数

日別の訪問者数を解析する。今回の実践は多くの人に地学への関心を高めてもらうことを目的としているので、どれだけ多くの人にブログの内容を広められたかを訪問者数の推移で判断することとした。日別の訪問者数の推移をグラフにした。訪問者数は、同一日の同一端末からの重複アクセスはカウントしていない。(図−2参照)

 月ごとにまとめた訪問者数と月ごとの記事数の関係(表−9参照)を見てみると、記事を多く書けば訪問者数が増加する傾向がみられる。「FC2ブログ」では自身のブログで新着記事を掲載すると、「FC2ブログ」のサイトのトップページに新着記事リストとして公開される。また、記事を掲載した直後にGoogle等の検索エンジンが記事を発見して公開する。なので、新着の記事を掲載すると訪問者数が増加するのだと考えられる。逆に、記事を書かない日が続くと、訪問者はしだいに減少している。つまりは、ブログの内容を広めるために訪問者数を増やしたい場合は、継続的に記事を掲載していく必要がある。

 

9 月別訪問者数と月別記事掲載数の関係

 

* 訪問者数は、200669日から200718日までのデーター

 

* 訪問者数は、200669日から200718日までのデーター

 

2 日別訪問者数の推移

 

 

 

5 考察

ブログの長所は、やはりその使いやすさであろう。アプリケーション・プログラムがネット上にすでにあるために、複雑なHTMLの知識がなくても画像の投稿・他のページへのリンク・文字の拡大縮小が容易に行えた。ページの形式も決まっているため、ページの構成などもほとんど考えなくていい。そのため、火山地形を調査してきた内容を、写真を加えて見やすく簡単に記事にすることができた。また、ランキングサービスなど自分のブログを宣伝する機能が充実していた。そのため、研究室での活動の宣伝にも有効であった。

ページの形式が決まっていることは短所でもあると感じた。掲載できる画像のサイズや大きさに上限があるため、他のソフトウェアなどを利用して画像編集を行う必要がある。また、ページのレイアウトを変更することは不可能ではないが、ホームページと同様にHTMLの知識が必要となってくる。

ブログは最新の記事が一番手前に掲載され、過去に作成された記事は掲載された日時順に並べられている。頻繁にページを訪問する人にとっては、最新の記事がすぐにわかるために非常に都合が良い。だが、カテゴリー分けの機能などがあるとはいえ、記事を整理して掲載したい場合は一般のホームページの方が都合が良いだろう。ブログの過去の記事を整理するためには、上記の案内板のようなものを作成するなどひと工夫が必要となる。

 

 

6 おわりに

 今回の実践では、新しいメディアとしてブログに目をつけ、火山の知識の普及を目的とした群馬県中心の火山地形の紹介と案内を行った。ブログは運営が容易であり、パソコンの知識に疎い人でも簡単にホームページに近いメディアを持つことができる。今回の実践の様に、ブログを地学の知識の普及や教材の宣伝に活用することも十分に有効であると考える。

 

 この論文を作成するにあたり、適切な助言・指導をしてくださった早川教授、地形調査に同行してくれたりアドバイスをくれた大学の同級生・先輩・後輩にこの場を借りて感謝申し上げます。

 

 

7 参考文献・参考URL

野村哲、群馬の地質をめぐって、築地書館

「フィールド火山学」、http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/kazan/field/

「群馬県の貴重な自然」、http://www.pref.gunma.jp/d/04/kankyo/kichou/tikeishitu/

 

 

 

2006年度地学卒業論文

 

 

付録