霧島火山群における火山防災事業に関する検討会 〜霧島火山の噴火の影響と危機管理〜
2004年12月13日@鹿児島県国分市

火山噴火危機における国と自治体の役割

群馬大学教育学部教授 早川 由紀夫


速記録 

 紹介いただきました早川です。よろしくお願いします。

 座ってやらせていただきます。

 今、資料4のプロフィールのところを読んでいただきましたけども、私はもともと地質学を勉強しまして、火山を対象に、卒業論文は草津白根山をやったんですが、そういう人間ですが、雲仙岳で91年に人が亡くなる前に現地にいて、人が亡くなるだろうなと思って、そのまま本当に亡くなってしまったという経験をしまして、そのころからこういう地質学とか地球物理学とか理学だけでは防災がかなわないということがわかってきまして、別の言い方をすれば、隣に座ってらっしゃる井村さんみたいな方がちゃんと地質学やってくれるから、僕はもう地質学やらなくてもいいやというぐらいに決心しまして、下の方の主要論文等には地質学がほとんどないですね。そういう、ほとんど文系の話に分類されるようなことを最近はやっております。

 皆さんのお手元に10ページから成る文章ばっかりのを用意しましたので、もし興味がありましたら、これ読んでください。こういう文系の話ですと、ちょっと話をし始めると時間がかかるものですから、多分きょうは頭出し、題目ぐらいをスキップしていくようなことになると思いますので、何とぞご容赦ください。

 火山噴火危機における国と自治体のそれぞれの役割についてとプログラムには書いてありまして、いつの間にか「それぞれの」が抜けておりますが、これはSTCからお題をいただいた後、私がどこかの段階で漏らしたんだと思います。なぜ抜いてしまったかというと、国と自治体がどう役割分担ができているのか、そういうことを語ってくれというふうなリクエストだったと思うんですが、それはまあ小さな問題です。

 何が重要かというと、国と自治体というのは、いずれも行政でして、それに対応する住民、助けられるべき住民、助かるべき住民、それと行政マンがどうやって対応するかということの方が僕は重要だと思いますので、国と自治体がどういうふうに役割分担しているかということは、法律など、あるいはこの国で決まっていることを話すこともありますけれども、重要なことは、対住民の姿勢、それを強く話したいと思います。

 いきなりイラクですが、結局これと全く僕は同じだと思います。

 ことし4月に、イラクでこの3人の方が、バッシングを受けたり、いろいろ日本国で話題になったですが、非常に火山噴火危機とよく似てると思いました。結局、緊急時における私権が制限できるものなのか、しちゃいけないのか、これに尽きるというのが今の僕の考えです。

 どういうことかといいますと、意見の対立、イラクのときにどうあったかというと、政府は、イラクはすごく危ないから邦人を保護できない、ですからイラクへ行かないでほしい、自粛してほしいと外務大臣は言った。一方、民間人の主張はどうか。危なくてもいいから行きたい、ジャーナリストはどうしても行かなくちゃいけない、そんなことで行くなとか言うもんでない、その対立です。だから、外務大臣が自粛してほしいと、自粛というのは自分でやらないということですが、自粛してほしいと強制するという、こういうおかしな状況の言葉を使わざるを得ないようなことだった。

 ここで義務と自由ですが、国は国民を守る義務がある、国民には移転の自由、つまり住居選択の自由がある。それからもう一つ、今カメラの人も来てますが、報道の自由、報道が自由にできる、この義務と自由のせめぎ合いです。

 イラク人の人質問題をどういうふうに解決するべきかというのを私なりに考えたのでは、罰則をもって渡航を禁じるのは、憲法22条に反するからしてはいけない。国は、いかにイラクが危ないかということを事細かく説明責任を果たして、粘り強く自粛を要請する、強制はできない。それでも行きたいという人、行きなさい。自己責任で行ってくればいい。万一つかまっちゃった場合には、政府は邦人保護できないかもしれないけれども、できるだけ努力しなくちゃいけない。行ってしまった人は、保護されることを期待してはいけない。何か秋ごろ、保護してくださいと言った人がいたみたいで、結局帰ってこれなかったみたいですけれども、そういう非常にドライな事柄だろうと思います。説明責任を果たして、一方で行きたい人は自己責任で行くと。それで実際に死ぬことが起こったわけです。

 火山でも同じだと思いまして、火山は、火山災害のときには、災害対策基本法63条というものが使われて、警戒区域を設定します。これは、罰則があって、10万円以下の罰金または拘留。同じと言ったのは間違いで、火山の方が罰則があるんですね、私権が制限されてる、これ。僕は、憲法違反じゃないかなと思うんですが、法学者に余りまだ詰めて聞いたことがないんですけれども、これは憲法に反してるんじゃないかなと思うんですが、災対法63条はこうなってます。

 警戒区域設定で、損失補償がなされたということは聞いたことがありません。

 実際に、どういうふうな火山でどうなってるか。

 伊豆大島。

 伊豆大島は、1986年に1カ月間、これは全島避難と町長が叫んで、それでみんな1万2,000人いなくなって、1カ月後に、正月の前に帰ってきてという、1カ月だったから体育館生活もまあ何とかこなせて、これは全く法律に基づかない処置で島から人がいなくなった。後から、何の根拠でこうなったのと、みんな思ったような感じです。

 その後、5年後に雲仙岳、91年。

 これで、市街地に、人が住んでいるところに1年余り63条が適用されたということがありました。これで私も気づいたし、世の中多く気づいた人がいて、63条問題というのが認知されたきっかけです。

 それから、有珠山の2000年ですが、これは数カ月間ですが、場所によりますが1年に達しない期間、60条で規制されました。多分私が思うのでは、91年の雲仙岳の63条問題があったので、63条は使うなというふうなことが思われたんじゃないかなと思いますが、これは想像です。

 それから、同じ年からの三宅島ですが、これはまだ現在、この時点でも継続中で、60条で島民が全部島から外に出ています。

 それから、今、浅間山噴火してますが、73年から63条で31年10カ月継続中という、こういうこれも非常に特異な例ですが、73年に63条を使ったまま、ずっとほってあって、これは後で少し詳しく話ししたいと思いますが、現在でも原則的にずっと31年間63条。ただし、これは人が住んでるところは入っていません。登山規制です。浅間山は、昭和に入ってから、登山者が30何人、石に打たれて死んでいるというふうな災害が起こってます。

 というのが、イラクから入って、イラクと火山災害は同じであるというのが私のきょうの前置きですが、それが結論でもあります。それが、どう同じであるか、火山で何が起こったかということを、大島、有珠山、雲仙岳、浅間山などを例にお話ししていきたいと思います。

 警察と町役場。

 何かというと、警察が決めたのか、町役場が決めたのかということなんですが、きょうは警察の方もいらっしゃっているようで、僕の先生に当たる人は、このとき警察に張ってて、警察が全部物事を決めるんだろうと思ってた。そしたら違って、町役場が全島避難決めて、それであれよあれよという間にみんないなくなった、そんなようなことを言ってました。古きよき時代です、もう20年にもなりますが。どうやらあれは全島避難させたかった人たちがいたみたいな感じがして、余りはっきり書いてありませんが、練習したかったみたいですね。

 行政判断をすることを拒んだ火山噴火予知連絡会、これは次のスライドで話す。

 そのときの鈴木都知事、このリーダーシップは強いものがありまして、鈴木都知事は火山学者ではありませんけれども、彼の現場へ行っての、そして、この静けさはあらしの前の静けさではないと、もう激しい噴火は起こらないのだという学術判断に踏み込んだ、僕は今でも覚えていますけど、これは彼のすごい越権行為であります。行政マンによる、政治家による火山学への侵入でありましたが、これによって人々は正月前に島に帰ることができた。そのときは、僕は学生だったから腹立たしかったんだけど、今から思うと、鈴木都知事ってすごいリーダーシップを出して、すごい偉かったんかもしれないなとか思っております。そういう異分野の人たちの力関係です。

 火山噴火予知連絡会の話ですが、火山専門家と防災にかかわる行政官から成る会です。ここで書いてあるのは、つまり大学の先生、帝国大学の先生たちもいるけれども、防災にかかわる行政マンもいる。ですから、純粋に学術討論を話ししているわけではありません。さらに言うべきことは、気象庁長官の私的プライベートな諮問機関である。つまり、法的根拠に基づいていない。法律には基づいてなくて、単なる長官がちょっと来てやと言って聞いてるだけです。

 しかし、この世の常、我が国のよく行われることで、審議会以上に予知連は力を持っている。それも、大島から雲仙岳、そういったテレビニュースで大々的に報道されたようなことを経て、予知連というのは我が国の噴火現象について総合判断を下す、あるいは近未来予測をする最高意思決定機関であると社会は認知しております。そういうところ、噴火予知連というのは。

 メンバーは、さっき言いましたように、帝国大学の先生のほかに、ちょっと古いですが、科技庁、国土庁、文部省、地質調査場、かなり古いですが、でも役人の方々もメンバーに、そういう連絡会というものが我が国の火山評価を決めているというのが実態であります。

 次、雲仙岳ですが、43人が死んだのは、これは余り言いたくないですけど、選挙です。こういった熱雲で3万人近い人が死んだ例が外国でありますが、似たようなことが小規模にこのとき起こったと。このときの63条警戒区域で、その線一本で明暗が分かれて、それから自衛隊がこのとき随分頑張って、人々に災害派遣ということで自衛隊が役に立つということを世に知らしめた。

 それから、鎌田慧のフライデー事件、これはちょっと話をする間がないと思いますが、この文章の中に書いてありますので。

 それから、警戒区域内の写真を実費配布した警察官と、これは全然話ししませんが、これも何というか結構難しい問題で、結構いいことしたはずなのに何か悪く言われちゃう場合があって、これは……。

 それよりも、もう少し災害対策基本法の話をまず。

 まず、この基本法ですが、これは我が国の災害対策の基本となる重要な法律であります。1959年9月、伊勢湾台風の後、61年につくられました。つまり、これは水害を念頭につくられた法律です。火山災害のような長期居座り型の災害については、ほとんど念頭に置かれていません。一過性の水害を念頭につくられていますので、大変不備があって、これは直すべきだと私は思います。基本法であるこの法自体は、なかなかよく練られた法だというふうにほかの人も評価していて、私もそう思うんですが、火山のような長期居座り型に対応できていません。

 といいながらも、まず現行法を説明しますと、避難勧告というものがあります。それは60条に基づいて市町村長が発する、これは重要です。国もしません、都道府県知事もしません、市町村長がしなければいけない、村長さんがしなくちゃいけない。三宅村村長が避難勧告を出しました。都知事は黙っていて、村長がやるわけです。

 あと、避難の指示という言葉がありますが、最近は勧告が弱い方に使われて、指示というのは強い方に使われるようになってます。同じ60条の中ですけれども、事態が急を要する場合に出されると書いてあるやつを、指示を強めの意味で使うというふうな運用が最近の火山危機ではなされております。

 避難命令、これはマスコミ用語でよく聞きますが、テレビや新聞でよくどこそこ地域に避難命令が出ましたとか言いますが、これは法律用語ではありません。日本の法律に避難命令はないと思います。ただし、63条に当該区域からの退去を命ずることができるという文がありますので、これを退去命令だと思えば、避難命令だと解釈することができます。

 さて、63条ですが、63条、さっきも言いましたように罰則規定がある、10万以下の罰金または拘留、116条です。それからもう一つ、特徴的なのは、60条が対人的指定、人をのかすというんですが、63条は地域的指定であります。地図で指定します。地域を指定して、この地域が警戒区域である、そこの違いがあります。

 それからもう一つ、これみんな私権の、プライベートな権利の制限について今お話ししているわけですけれども、車両通行制限というのがあります。災対法76条、これは都道府県公安委員会が発します。これにも罰則規定があって、違反した者には三月以下の懲役または20万円以下の罰金。これは必要があるでしょうから、救急車が通らなくちゃいけないですし、災害対策する自動車は通さなくちゃいけないんで、用がない車は来ないでほしい、これは正当であって、どうしても行きたい人は歩いて行けばいいわけです。そういう抜け道というか、どうしてもあって、権利は完全には妨げられておりません、これでは。

 さて、災対法の中には、常時の事柄として、防災会議というものを設置することになっていて、まず国が中央防災会議を今、内閣府に置いてあります。地方公共団体は、地方防災会議を置くことになっています。ただし、都道府県は置かなくちゃいけないけれども、市町村は置かなくてもいい、小さな村は置かなくてもいいというふうに書いてあります。

 防災会議は何をするかというと、普通平時は防災計画を立てる。霧島火山防災計画とかいうのを立てるわけです。それから、火山が噴火しそうになったり噴火しちゃった場合には、緊急措置をどうするか、そういうときどうするかを考えておく、緊急措置です。

 そういった火山が怒り出して災害が発生しますと、都道府県知事または市町村長は、みずからが本部長になる災害対策本部を設置する、災対本部というのが普通設置されます。これが普通の災害ですが、国家的立場から災害応急対策を推進しなければならないほどの災害が発生したときはとか何か書いてますが、国務大臣が本部長となる非常災害対策本部が内閣府に設置されます。有珠山のとき、2000年、それから三宅島2000年、今の中越地震もそうなんですかね。僕は浅間山のことばっかり頭にあって、中越地震のことをフォローしてないんですが、多分中越も非常災害対策本部ができてるんじゃないかなと。

 さらにその上がありまして、緊急災害対策本部というのがあります。これは、首都東京が壊滅的打撃を受けるときです。内閣総理大臣、今でいう小泉さんが本部長になるべき緊急災害対策本部というのがあります。このときは、世界都市東京ですから、世界の経済に重大な影響が、もう国の経済に重大な影響をというのを過ぎて、世界の経済に重大な影響を及ぼすような状況が発生したときにしますから、東京がやられるときは、災害緊急事態というのを布告するんだそうです。これは、金融モラトルアムが含まれます。つまり、借金を返さなくていいとか、何かそういうことらしくて、ある種戒厳令に近い事柄が用意されております。

 こういうものが、緊急災害対策本部以上のものが、火山危機ではまだ設置されたことはないと思います。普通ですから、非常災害対策本部で、国務大臣が本部長になって対応してるわけです。

 それのいい例が有珠山です。2000年で、このときは伊達霞が関という言葉が大変よく使われましたが、伊達に霞が関が移っていっちゃったようなもんだった。これは何かというと、ちょうど省庁再編があって、国政選挙が控えていましたので、みんな頑張ったわけです、アピールしたかったから。

 あと、私が行って、自衛隊も見て、立ちんぼの警察官のところにも何で立ってんですかとか聞いたりしたやつがありますが、それは後で話します。次のスライドで説明します。

 それから、先ほど、有珠は63条ではなくて60条、避難指示、60条にとどまったということを言いましたが、洞爺湖の水面に避難指示を出した、そういうことです。つまり、洞爺湖の水面はだれも住んでいませんから、あれはどう考えても法律的には警戒区域指定だと思いますが、それもせずに、あれも60条を使ったということですから、63条を使うなという意思がどこかにあったんだろうというふうなのが、これが一つの僕の根拠です、そう思っている。

 それから、戦車とペットの話は、もう少し後で。

 我が国の火山監視の責任機関は気象庁です。これは決まっています。我が国は、気象庁が火山監視を責任持って行っております。しかし、実際には気象庁だけでは力が足らなくて、マンパワーが足らなくて、内閣府とか国土交通省とか大学とか文部科学省などが協力してあげて、それで噴火予知連をつくって、みんなで火山防災をしている、そういうのが実態であります。

 しかし、これを彼我の差、アメリカと比べてみますと、アメリカはUSGSという巨大な組織があって、そこが全部自前で調査をしていて、あそこには火山の博士号を持った人が何十人いて、それでそこでちゃんと政治的決断もしてという一極集中です。これは大きな違いです。アメリカと日本は全然違う。

 それから、日本に戻りまして、気象庁について、監視をしていると今言いましたが、ここ注意してください。火山警報や注意報を出す義務を気象庁は負っていない、これは注意しなくちゃいけない。

 この気象業務法13条に書いてありますように、これ、どう読むかといいますと、13条、気象、地象などを予報及び警報しなければならないと書いてありますが、括弧の中が違うんです。地震及び火山を除くと書いてあります。ですから、地震及び火山は予報、警報をしなくていいわけです。これは、結局しないということに今はなっております。つまり、大雨とか台風とかを気象庁はきちんと注意報、警報を出さなくちゃいけないというふうに義務を負っているんだけれども、それと同じ目でいうと、地震と火山に関しては、気象庁はそういうことをやっちゃいけないとむしろ言われている、やらないことになっているわけです。そこを誤解しないように、気象庁はそこをやってくれないんだということを知っておく必要があります。

 さて、とは言っても、時代は納税者が求めますから、警報に当たるものとして緊急火山情報があります。それから、注意報に当たるものとして臨時火山情報があります。先ほどの気象業務法の絡みがありますから、絶対これは口が裂けても警報であるとは言いません。警報であるとは絶対言いませんが、警報に当たる緊急火山情報なんていうのがNHKテレビなどが表現する言い方です。

 緊急は人が死にそうなときに出ます。臨時は注意が必要なときに出ます。火山観測情報は、それらを補って、きめ細かくというためにあります。これらは随時情報ですが、このほかに、毎週、毎月、毎年まとめて整理して出す定期情報。最近は定期情報という言葉じゃなくなったと思いましたが直してないですね、これ。毎週、毎月、毎年出しています。

 これは、伊達霞が関の模様で、ばちっと私が写真撮らせてもらったものです。運輸省とか海上保安庁とかいう字が見えますが、座席表があって、遠くの方は見えませんが、この辺が気象庁ですね。自衛隊、国土庁、町とか道とか、それから科技庁とか道路公団とか何かが見えます。

 それで、きょうどんな会議がいつだと全部公開されてまして、私みたいなぽっと出が行っても、こういう会議を傍聴できて、この9時からのですかね、こういう会議を傍聴できて、見ちゃってて、この辺にNTTとかバックプリントしている人いますが、NTTは災対法のいう指定公共機関ですから、彼らもちゃんと出て、みんなで会議をしている。たしかこの人が一番偉い人かな、これが大臣様だった、たしか。気象庁はここですね。

 これが、会議が多分15分ぐらいだったように思いますが、すぐそれが記者会見の場に移って、この辺みんなプレスですが、さっきと同じような人が座ってて記者会見をする。これ全部、私が見てていい。非常にオープンにこのときはなされました。

 今度は通せんぼ現場ですが、これは1カ所、これがもう1カ所。このお兄さんが一番几帳面な人でしたね、結構インタビューしたんですが。

 4カ所こういう、それぞれ様子が違いますが、でも、通行どめ、この先何とかで車両通れませんと書いてあるだけで、警察署長か何か書いてあるんですが、理由が書いてないんですね。通行どめと書いてあるのに理由が書いてない。それを彼なんかに聞いても、彼も余り答えられなくて、結局僕は伊達の警察署に行って、次長さんか何かに、結局次長さんは困っちゃって、やっぱり先生の言うように根拠はありません、頼んでるだけですと、強制力はありませんと彼は最終的には言いましたけど。

 何で彼らが立ってるかと、これは警察官職務執行法のもとで立っております。災対法61条、63条に定められてる避難を通知したり、実際にさせるために、警察官がそのアクションをやります。それは、職務執行法の4条に書いてあって、天災、すごく古い法律で狂犬、奔馬とかこんなこと書いてますが、ここですね、「必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ」何とか「できる」。これによって、警察官があそこに立っててやっている。

 それのさらに上位の法律は61条、63条です。60条じゃないですね。60条でしか有珠のときには使われなかったはずで、こういったところまで突き詰めていくと、ちょっとほころびが見えてくるわけです。

 それから、もう一つ言いたいのは、有珠のときは戦車に乗って、本当に戦車ですが、自衛隊員が戦車に乗って、こうやって居残っていた男性の保護作戦、強制的に保護した。ちょっとこの男性は何か精神の病気だったらしいんですが、それは置いといて、しかしこうやって戦車で保護することが許されるのかどうかというと、僕は根本的には疑問を持ってます。普通は、こう保護することになっちゃうんですけれども。

 もう一つ、この戦車出動のときと前後してペットの問題があって、動物愛護家がロープのプレスラインの内側に残されたペットを救出しにいって、それに対して、ペットを救出してくれと頼んだ人はよくない人だとか、よくペットを助けたとか、いろいろ社会的な判断が分かれたところがあります。ペットになってしまうと、僕はちょっとわかりません。人間の法律で牛耳ることができない、ペットというまた別の問題があります。これは、新潟の地震でも、今ペットというのが問題になってると思います。避難して、1カ所に人々を集めると、ペットという問題が出てきます。

 三宅島ですが、三宅島は2000年、有珠の3カ月後ぐらいに起こりました。

 6月26日に緊急火山情報が出まして、都知事が過剰反応してと書きましたが、自衛隊出して、島民を全部引き上げようかと多分思ったんだと思いますが、島民はぼーっとしてて、のんびりしてて、口あけてたんで、多分都知事さんは怒ったらしくて、それで帰っちゃって、その後すぐ本部を解散してしまった。その後に、のっぴきならない事態がどんどん起きている。

 皆さんご承知のように、現在まだ島には帰れていない。この話は、ちょっと話がずれるから、これだけ紹介しときましょう。

 8月18日に大きい噴火が起こって、その後、島民はどんどん、これ縦軸は島から自分で東海汽船の切符買って出ていった人の数です。3,800人です、島民の数は。18日からずっと来て、9月1日に都知事の呼びかけで全島避難ということになるんですが、それより前に、29日の噴火などを契機に2,500人の人が自主的に東海汽船の切符を買って自分で避難していた。全島避難になる前に既に3分の2は出ていたというのが事実です。そういうふうになってしまったのはなぜか。これは、ちょっとこの時間内には語れないような大変な問題が内在しております。

 それから、浅間山です。

 浅間山、これは現在進行中です。

 まず、説明責任と自己責任、さっきのイラクのところでもお話ししましたが、ハワイのキラウエアでは、このアテンションハイカーズ、ハイカーへの注意で、ラバービューイング、溶岩を見学、蛍光灯持っていけ、サンタンローション持っていけ、水をいっぱい持っていけ、そうやって見にいけと書いてあるわけです。見にいくためには、死なないためにはどうすればいいかが書いてあります。懐中電灯がないと、夜中真っ暗になって死にますが、夕方が一番きれいなんです。日没、それからしばらくが一番きれいなんで、懐中電灯が必携です。こうやって、これはちゃんとアメリカの国が、マグマが出ているところを見にいくためにはどうすればいいかを教えている。これは説明責任果たしている。自己責任で行けというわけです。

 浅間山は結構そういうセンスで、30年前から63条で、ずっと忘れられてて警戒区域だったんですが、それを最近、二、三年前に長野県側の市町村が相談して、気象庁のレベル1だと500メートル、レベル2だと2キロメートル、レベル3だと4キロメートル、こういう自動的なレベルと警戒区域の連動をさせました。これは日本で初めての例で、これがよく動いてます。現在、レベル3で4キロ規制、こういう黄色の範囲が警戒区域、63条になってます。そういうわけで、自己責任のところには今つながりませんがいいです、ここは連動してるということをご説明します。

 ただし、余りこういうことを言うと事務局が嫌かもしれないけども、やっぱり用意してあるから言いますが、ハザードマップで今のレベル3で4キロの線、鬼押出し園、これ西部です。浅間火山博物館、これは長野原町営です。2つ、鬼押出しがあるんですね。こういうことになってますが、実はよく見ると、よくはかると、4キロはここにあって、浅間園というのはこの内側にあって、3.8キロにあって、西部は確かに4.5キロぐらいのところにあるんです。これは内側にあるんです。これは大きな問題だと私は思って、つまりこのハザードマップはうそが書いてある。

 ここは九州ですから、似たような例があったのを知っている人もいると思いますが、1979年7月か8月、夏だったですね、阿蘇でロープウエー山頂駅が1キロよりも内側にあるのに外側に書いて、それで営業したということがあって、あれは結局3人か4人の方が亡くなったから問題になりましたが、これはまだだれもけがしてないから問題になりませんが、このハザードマップはだれがつくったかというと、だれですかね、国ですね。

 どうなってるかというと、これが景色ですが、こうやって富士急の大型バスがいて、それで、あろうことか、僕はびっくりしたんですが、こうやってピクニックしてるんですね、お昼に。確かにこのときは暖かくて、10月だったかな、家族連れがここで、何で、でもここで、火山博物館の3.8キロで、ここでピクニックするのかと。僕は、よっぽどやめなさいよとか危ないですよと言おうかと思ったけど、黙ってましたけど、人というのはこういうものです。だから、情報をちゃんと伝えないとこうなります。これが常態化している、今でもこれは継続してます。

 もう一つは、レベルの話ですが、きょうは気象庁の方もいらっしゃってるからちゃんと言いますが、浅間山でレベル5、4、3、2で、それが火山の状態、噴火の形態、事例で、今3だという。3は、山頂火口から二、三キロ程度以内まで噴石。4は、山頂火口から3キロより遠いところまで噴出物があると、噴石が遠くまで来たと。

 今回は、本当に3なのかと。どう考えても、僕は3じゃなくて、3より超えてると思うんですが、でも3なんですね。

 事例を見ますと、83年、2000年、2002年、それから1950年、1973年。1973年の噴火って4の事例で、気象庁の火山観測情報やら何やらいっぱいの情報を見ると、今回は73年によく似てる、とても似てる、似てる似てるといっぱい書いてあるんだけれども、レベルは3なんですね。それが非常に不思議で、これは何で3で、4にできないのかという裏事情があるらしいんですが、こういう不思議はやっぱり困る、矛盾は困る。こういうのは、やっぱり速やかに直すべきだと私は思います。

 こういうことを続けると、やっぱり国民は信用しなくなると思います。信用されるためには、これ宮崎県のやつを今回いただいて、最後のスライドですが、ここですね、テレビやラジオ、市役所、町役場などの行政機関の広報などを聞いて正確な情報を得ましょう、こう書いてあるんですね。つまり、こういうところ、テレビやラジオや市役所や町役場は正確な情報を出すんだというふうな前提で書かれている。市町長から避難勧告や避難指示が出たら、それに従いましょう、自分のプライベートな権利は捨てて従いましょうと書いてある。これは、やっぱりちょっとまだ余りにも幼な過ぎて、複雑な人間社会の状況が反映されていない。これは幼稚園児に語って聞かせるならいいけれども、これはいい大人に見せる図面のはずですから、こんな簡単ではない。浅間の例を見ればわかるようにというふうなのが、最近常々思っていることであります。

 ちょうど時間です。


フリー・ディスカッションでの発言

 ハザードマップって、役に立ってないと思うんですよ。噴火、もう10何年間かあったけども、全然役に立ってない。有珠のとき、オカダ先生いたから、みんなよかったけれども、実際にマップは全然役立ってないし、浅間山だって役に立ってないし、ハザードマップって、やっぱり役に立たないんだと思うんですね。

 何がハザードマップつくらせるかというと、ハザードマップつくるプロセスが多分いいんでしょうね。こうやって人がいっぱい集まって、いろいろな学者と行政と、そういう一緒にやって、ヒューマンリレーションができて、いざというときの顔知って飲んだことがあると、そういったプロセスがむしろ重要で、でき上がったマップというのは役に立たないと僕は思ってます。

 どうやってやったら、でき上がったマップが役に立たせ、役に立つマップは何かというと、僕はリスクマップだと思うんですよ。ハザードマップというのは、例えばこの霧島のマップだって、井村先生さっき言った20センチの軽石が降るのがここと丸書いてあるけども、これって一体何年に一遍起こるのって、たしか霧島はちょっと書いてあったんですよね。そのリスクですよ。何年に一遍そういうことが起こるのかという、ハザードではなくて、災害ではなくて、危険度、リスクが表現されてないといけない。そのリスクが表現され、1年に何回の確率で起こるかということが表現されていれば、それに対して幾らの投資をして、何人人を雇って、どれだけの施設をやって、それでペイするかしないかという費用対効果での発想で考えない限り、僕はハザードマップは役に立たないと思う。リスクマップにしない限り、社会で使われるマップにはならないというのが僕の持論です。


せっかく市町村の方が来ているんで、ちょっと市町村の方に味方というか、僕はここへ来る前に、霧島に関しては、非常によくチームワークがなされているんだというふうに思い込んで来たんですけど、来てみて、そうでもないんだなと思いまして、市町村の方にお知恵をあげますので。

 災害対策基本法で、防災にかかわる第一義的責務は市町村長にあるんですけれども、霧島のように複数の市町村にまたがる場合には、県とか国がそれらを束ねて協議会なるものをつくって事に当たらなければいけないことになっております。ですから、ここで皆さんは十分な事実を言いました。24時間ぐらいで登山規制がうまくできなかった、隣の村とうまく調整できなかった、何したらいいかわからんかったという、すごく不都合の事実があったということをこの場で発言なさいました、複数の市町村が。そして、この場には県もいるし、国も聞いたわけです。であれば、このような事態であれば、宮崎県、鹿児島県、そして国は、協議会をつくって、組織して、霧島の事に当たらなければいけない責務を今負ったんですよ。

 だから、このように、検討会ですか、これ、それから委員会とか、あるいは連絡会、そういったものじゃだめなんですよ。協議会をつくらないといけないんですよ、県か国が。そして、霧島の防災に当たらなくちゃいけないと災対法に書いてあるんですよ。それで、市町村の方、これだけ困ってるというのを言ったんです。僕、知っちゃったんです。プレスもいるんですよ。もうやらなくちゃいけないと僕は思います。協議会をつくらないといけない。

 協議会がどこにあるかというと、草津白根があります。群馬県の草津白根、嬬恋村、草津町、六合村、長野原、4つからなる協議会を持ってます、草津白根は。

 浅間は、実質的には長野県側の市町村には協議会があります。群馬県側にはありません。長野と群馬がぶった切れています。

 これは、きょう、僕はだから宮崎と鹿児島がどういう関係にあるのか知りたいと思って来たんですが、それ以前の問題だということがわかったんで愕然としたんですけれども、そういうわけで、ぜひとも災対法に基づく協議会を速やかに発足させてほしい。


弁解というか、言いわけを言ってもらう必要はなくて、協議会は、つくらなくちゃいけないのは当たり前なんですよ。だけど、協議会というとすごく重いものだから、そう簡単にはつくれないのは当たり前なんですよ。

 ですから、協議会を目指して頑張りましょうというふうな目的を選定するというのがまずきょうだと。いつまでやれとか、早くやれとかは言いましたけれども、いつまでというのは言えないのは当たり前ですよ、そんな重いんですから。

 だから、皆さんに言いたいのは、これは勉強会であって、連絡会であって、有志の寄り合いだから、何にも権限がないんですよ、いざ事が起こったときに。いざ事が起こったときに物を決定できるような意思決定機関になるためには、協議会という看板にしなければいけないのだというふうなことをみんなが認識すればいいんだと。


そんな怖がってちゃだめで、火山のことでびくびくしてちゃ、観光業者、おまんま食い上げになっちゃうから、そんなに怖がってない、もっと楽しまないとだめですよ、火山を。

 浅間山でもそうなんですけど、危ないと、3.8キロだから火山博物館危ないと言うんだけれど、別に僕は火影ってすごいんですよ、浅間山の火影、本当に真っ赤で。僕は、夜な夜な撮影にいってるんですね。おもしろいですよ。火山の溶岩が出て赤いわけじゃないんだけれども、山頂の上にぽっと噴煙とか雲のところに赤くなって、肉眼ではうっすら見えるのを、写真撮ると真っ赤に見えるんですよね。それがうれしくて、今デジカメですぐにチェックできるんで、それで火山を楽しんでるんですよ。

 火山を楽しむことによって、その火影を毎日毎日チェックして、そういうことによって、今浅間山がどれくらい危なくて、どれくらい今穏やかなのか何となくわかってくる。こういうことをみんながしたらいいだろうなと思うし、火影が見えますよ、私のペンションからと言って売り出して、火影つき2食で1万円とか、そうやってやればいいだろうになと思って、ただ単に火山が危ないというだけじゃなくて、余り突っ込んでっちゃいけないけれども、遠巻きにして火山を楽しむというセンスを私たちは持たなくちゃやってられないですよ。火山と一緒に共存していかなくちゃいけない宿命に僕らいるわけですから、そういうことも追加しときます。