エコノミストの景気見通し報道に習おう

エコノミストの景気見通しが全国紙にごくふつうに発表され,国民にすんなりと受け入れられている事実があります.

噴火予知や地震予知にかかわるさまざまな情報伝達のなかには,エコノミストの景気見通し報道と同列に扱える部分もあります.たとえば,複数の火山学者による特定火山の近未来予測は,景気見通しと同様に全国紙で報道されてよいと思います.

学者個人の予測意見が経済学ではすでにごくふつうに新聞報道されているが,火山学・地震学ではまだほとんど報道されていないのは,噴火予知・地震予知という話題に特殊事情があるからではなく,単に火山学・地震学と社会の連携が経済学と社会の連携ほど密接でないがためだと思います.

一国の存亡を左右するかもしれない経済学の未来予測が公開されています.火山噴火や地震が社会を揺さぶる度合いはそれよりずっと小さいでしょうから,その未来予測を公開することを控える理由はないと考えます.

1991年5月の雲仙危機で,多くの火山学者が「火砕流」ということばを使うことを自粛しました.自粛の結果が何をもたらしたかはよく知られています.「特定火山の近未来予測」を語ることを火山学者がもし自粛しているなら,雲仙と同じ過ちを繰り返しているのではないでしょうか.

火山学・地震学を防災科学として社会に貢献させようと希望するなら,火山学者と地震学者は経済学者の実践をみならうべきだと思います.

朝日新聞1998.11.28