「火山活動」の語,それから「火山災害」と「噴火災害」

富士山ハザードマップ作成協議会(第1回)が,平成13年7月11日(水) にありました.富士山ハザードマップ作成協議会規約がインターネットで公開されています.その「目的」のところに次のようにあります:

2.目 的
 本協議会は、富士山で仮に被害を伴うような
火山活動が発生した場合にもできるだけ被害を少なくするため、関係する国、県、市町村等の防災機関が的確に事前の防災対策や緊急時の防災活動等を行えるよう、また住民等が的確な安全確保のための対策や行動がとれるよう、火山と地域の共存について十分配慮しつつ、富士山が仮に噴火した場合に想定される被害やその場合の防災対策等を踏まえた火山ハザードマップを作成し、防災対策の推進を図ることを目的とする。

この文は,たとえば以下のように書かれた方がよかったと思います.

2.目 的
 本協議会は
、富士山で仮に火山災害が発生した場合に,できるだけ被害を少なくするため、関係する国、県、市町村等の防災機関が事前の防災対策や緊急時の防災行動を的確に行えるよう、また住民等が安全確保のための対策や行動を的確にとれるよう、火山と地域の共存について十分配慮しつつ、想定される被害や防災対策等を盛り込んだ富士山ハザードマップを作成して防災対策の推進を図ることを目的とする。

重要部分だけを説明します.

「火山活動」の語は,火山の活動という意味です.死火山でないかぎり,火山は地下で活動しています.火山の地下では火山活動がいつも進行しています.もう噴火するだけの元気はないが,マグマだまりが冷えつつあるというのも火山活動の末期的状態だといえます.

ですから「仮に被害を伴うような」の修飾語をかぶせて「仮に被害を伴うような火山活動が発生した場合にも」と書いたのは誤りではないですが,多数の低周波地震が発生するようになった現在を,「富士山で火山活動が発生したとは,まだみていない」と誤解されやすい表現です.現時点で,富士山の地下でいま火山活動が進行中であることは疑いのない事実です.このような誤解を避けるため,上の文章中の「被害を伴うような火山活動」は,簡潔明瞭に「火山災害」というのがよいと思います.

後段に「富士山が仮に噴火した場合に想定される被害」の句があります.この表現は,マグマの噴出を伴わない被害つまり噴火によらない被害を含まないように読めるので,気がかりです.急峻で大きな山体をもつ富士山は,山体崩壊によって周囲に甚大な被害をもたらす危険をはらんでいます.1980年5月にアメリカ・ワシントン州で起こったセントヘレンズ山の崩壊と似たことが起こる危険です.この危険が今後の協議で考慮されないことがないように希望します.

補足

火山災害には次の二種類があります:
 ・噴火災害(溶岩流・火山灰の降下・火砕流など)
 ・非噴火災害(地震動・降雨などをきっかけとして起こる山体崩壊・土石流など)


2001.7.12