Date: Sun, 16 Apr 2000 18:10:50 +0900
From: Nobuo Geshi
Subject: 明治のコーン
MIME-Version: 1.0

早川様
噴石丘を作るような活動は今回に限らないようです。
三松正夫氏の「昭和新山日記」の後ろについている、明治43年の噴火記録のスケッ
チをみると、それぞれの火口の周りに実に見事なコーンが描かれています。さら
に 24番火口には「小富士」なる名前がつけられています。

95年の復刻版Mimatsu. M., Shiwa-Shinzan Diary.のFig.180です。私は英語版し
か持っていませんが、日本語版にも同じ絵が出ているはずです。

下司 信夫 geshi@sys.eps.s.u-tokyo.ac.jp


下司さん,

よい本を思い出させてくださって,ありがとうございます.いま書棚から取ってきました.これまで私は,明治の噴火について,Omori (1911)をおもに参照していました(この古い報告のオリジナルを私は個人所有している.ふふふ).Omori (1911)のFig. 16の写真は,そのスケッチと同様のイメージを与えています.ぜひごらんください.

明治の噴火も,たぶんいまの噴火と同じように,マグマの破片をたくさん放出したのだろうと思います.それを水蒸気爆発と呼んできたのは,今回を機会に,修正されることになるだろうと予想します.

早川由紀夫(2000.4.17.0820)


Date: Mon, 17 Apr 2000 09:19:09 +0900
From: Nobuo Geshi <geshi@sys.eps.s.u-tokyo.ac.jp>
To: Yukio Hayakawa <hayakawa@edu.gunma-u.ac.jp>
Subject: Re: 明治のコーン
MIME-Version: 1.0

早川様

おはようございます。げしです。

> >噴石丘を作るような活動は今回に限らないようです。
> Omori (1911)のFig. 16の写真は,そのスケッチと同様のイメージを与えています.ぜひごらんく
> ださい.
>
> 明治の噴火も,たぶんいまの噴火と同じように,マグマの破片をたくさん放出したの
> だろうと思います.それを水蒸気爆発と呼んできたのは,今回を機会に,修正される
> ことになるだろうと予想します.

噴石丘そのものがどれくらいマグマの破片で構成されているかはまた別問題だと
思います。金毘羅山火口からの灰は変質火山岩片がほとんどだそうですから、あ
のきれいなコーンも実際はそうしたマグマの破片以外のものからなっていると考
えたほうがよいとおもいます。(マグマ)水蒸気爆発でも、場合によってはコー
ン状の地形ができる、という事実が重要です。火口リムぎりぎりのところにたく
さん噴出物が落下し、斜面を転がるというスコリア丘成長のようなプロセスが
(マグマ)水蒸気爆発でも起こりうるということなのでしょう。狭い火口から勢
い良く垂直に吹き出すジェットが原因でしょうか。
いずれにしてもおもしろいですねえ。

昭和新山でも、やはり噴石丘といってもよさそうな似たようなスケッチや写真が
ありますね。同じ本のFig.120や130のスケッチは明らかにコーン状の地形が描か
れています、Fig.118の写真でも、火口3の周りに放出物からなる低い噴石丘スロー
プが取り巻いているのがよく分かります。
今後、浅いところでの爆発が続いて、いわゆるカリフラワー状の噴煙が水平方向
に広がるようになると、このようなコーンは破壊されてしまうのではないでしょ
うか?そして拡大された火口の周りにゆるい火砕物のスロープがより広く発達す
るようになるのでは?

しかし、予見えしてみると三松さんという人は実によく自分の目で観察していま
すね。スケッチと記載の的確さに脱帽です。現在の私たちはいろいろと道具は持っ
ているけど、自分の目で見るということをおろそかにしているのではないかと、
こういう明治から戦前くらいまでの文献を見るにつけ反省させられます。

下司 信夫 geshi@sys.eps.s.u-tokyo.ac.jp