臨時火山情報 第21号 平成12年5月22日16時10分 室蘭地方気象台発表 火山名 有珠山 有珠山の火山活動について、火山噴火予知連絡会は、以下のとおりの統一見解 を発表しました。 有珠山の火山活動に関する火山噴火予知連絡会統一見解 有珠山では、3月31日に噴火を開始して以来、現在まで噴火活動が続き、弱い ながらも隆起が続いている。 噴火の初期には多数の火口を形成して火山灰を噴出したが、4月中旬以降は活動 はいくつかの火口に集中し、間欠的に爆発を繰り返す状態になった。爆発の強さや 頻度、噴煙量は次第に低下している。初期の数日間に噴出した火山灰には、新しい マグマを起源とする物質が含まれていたが、それ以降の噴出物には同様なマグマ物 質はほとんど見つかっていない。  噴火開始前後には、有感地震を含む多数の地震が発生したが(最大M4.6)、そ の後地震活動は急速に低下した。現在も山体西部と南側の深さ数kmを中心に地震 活動が続いているが、4月中旬以降震源分布・回数・規模(M2-3)等に大きな変 化は見られない。  この間、西山西麓を中心とする大きな隆起が生じ、隆起量は大きなところで 60m程度、隆起体積は約4千万立方メートルと見積もられる。隆起速度は次第に減 少し、最近は10cm/日程度になった。隆起速度の減少に要した時間は、1910年 の噴火とほぼ同程度であり、1943-45年の噴火や1977-78の噴火と比べると1桁 以上短い。 以上のように、マグマ活動は次第に低下しており、このままの傾向が続けば噴 火が終息に向かう可能性がある。しかし、噴火、隆起、地震活動等が依然として継 続していることから、マグマと地下水の新たな接触などによって、現在の活動火口 周辺に影響が及ぶ規模の爆発が発生する可能性は、当分続くと考えられる。  また、今後、地下から供給されるマグマの量が増大して、現在の活動域または新 たな場所で更に大きな噴火に発展する可能性も否定しきれないが、その場合には事 前に地殻変動、地震活動、地表変形、噴煙等の変化をとらえられる可能性が高い。  以上のことから、活動火口周辺では引き続き警戒が必要である。また、新たな活 動活発化に対し、火山活動を注意深く監視していく必要がある。