5.02(火)

震源データを入手しました.今回の有珠山噴火危機では,震源データはあまり重要な情報ではないという意見があります.震源データが重要な情報を提供しない事実にむしろ注目すべきだという意見もあります.たしかなことは,前回1977年噴火のときの震源分布と今回のそれが大きく違うことです.前回の震源はほとんど2kmより浅かった.
 情報を隠匿する行為は,不必要な疑心暗鬼を招いてパニックの誘因をつくることがあります.パニックを防ぐ最良の方法は,情報を隠さないですみやかに公開し,同時にコミュニケーション手段を確保することです.(1300)
 1978年の震源は確かにほとんど2kmより浅かったですが,1977年噴火直前の震源は地下5kmまで分布していたことがわかりました.(5.9.1740)
 
▼安全が確認されたから避難指示が解除されたのではありません.なお危険はあるが,その危険の大きさが十分小さいとだれかがみとめたから避難指示が解除されたのです.この違いは小さいようにみえるかもしれませんが,重大な違いであることに気づいてください.このことはすでに4.20にお話ししました.
 ゼロリスクはないという認知心理学の基本も知らないマスメディアを,ここで私はつよく批判します.(1220)
 
▼火山災害から国民の生命・身体を守るべき責任を,活動火山対策特別処置法21条によって,国は負っています.この法律に従って,そのような場合には気象庁が緊急火山情報を出して都道府県知事に伝えます(市町村長に伝えるのでないことに注意).
 今回,気象庁はすでに緊急火山情報を5回出しました.噴火前に緊急火山情報を出したことは意欲的取り組みとして高く評価できますが,ここではさらにもう一段の努力を気象庁に求めます.国民の生命・身体が危険にさらされる地域とその期間を火山情報に明記してほしい.21条を厳格に実行するなら,ほんらいそうすべき責務が国にあると考えます.
 
▼きのう1663年噴火のマグマ噴出量を2億5000万トンと書きましたが,25億トンの誤りでした.単純ミスです.ごめんなさい.
 
▼ゼロリスクはありません.100%かならずのリスクはあり得ますが,火山噴火のリスクでそれがあるかどうかは疑わしい.リスクに確実なことはなく,不確実性が避けられないことを知るのが重要です.→『リスクとつきあう』小山真人さんによる吉川肇子さん本の書評
 
▼いれないのなら63条を使うべきです.いまの60条規制に留まるなら,はいろうとする人を妨げることは誰にもできません.ただし,はいる人は車両を使うことができません.76条規制がありますから.もっとも危険な徒歩ではいるしか許されません.なんという法の不合理!
 遠くから見ている私には,63条規制に移行することを関係者のほとんどが望んでいるようにみえます.住民ですら,(ことの重大性をよく理解しないまま)それを望んでいる人が多いようにみえます.私は望みませんが,当事者たちが望むならしかたないでしょう.どうぞ63条の警戒区域指定をなさいませ,長崎町長.
 
洞爺湖温泉の住民のかたへのメッセージ:いまのみなさんは,災害対策基本法63条による警戒区域指定が洞爺湖温泉に適用されることを積極的に後押ししているように,私にはみえます.63条が適用された場合,洞爺湖温泉の再建は,たとえ噴火がこのまま静まっても,たいへんむずかしくなるでしょう.みなさんがこのこと承知した上で行動しているのでなくても,自分の行動によって生じた結果は,みなさん自身が引き受けなければなりません.
 みなさんはもっと勉強するべきです.自立するべきです.自分自身の命と平穏な生活の継続が,いま重大な危機に瀕していることをもっとよく自覚してください.もし勉強する時間がないのなら,あるいは自立できないのなら,長崎町長の指示に黙って従う義務があります.一時帰宅したいなどと身勝手な要望を出すことは許されません.(0855/1600)