三宅島-神津島2000年ページ

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8.06(日)

三宅島砂時計は,まだ落ち続けていると私は考えています.その根拠を列挙します.
  1. 陥没の日7.08から始まった地震集中・傾斜計ステップ・長周期地震・GPS変化の四点セットが毎日一回(あるいは二回)のペースでまだ続いている.
  2. 7月の2回の噴火で火口から出た物質の量は陥没量の1%未満である.つまり,噴火が陥没を起こしたのではなく,陥没が噴火を伴ったのだと考えられる.噴火がないから陥没はもう停止したとみることはできない.
  3. 7.09,7.10,7.11に撮影された空中写真をみると,噴火を伴わないまま,毎日確実に陥没が進行していたことがわかる.
  4. 写真解析した結果,7.22から8.03までの期間に火口体積が1億2200万立方メートル増加したことがわかる.この増大が測定誤差によるみかけであるとは考えられない.現時点でも,毎日1000万立方メートルずつの陥没が継続しているとみられる.(1630)
海底噴火の危険 「岩脈状のマグマの活動が浅くなった可能性も示唆しています」という8.04伊豆部会コメント文がなぜ,「海底噴火の可能性否定」という読売新聞見出しになるのだろうか?私には理解できません.神津島沖の海底噴火の危険の話です.浅くなったのなら,噴火の危険が増したと考えるのが常識です.その常識をくつがえすに十分な科学的説明が付されないのは,おかしい.
 海底噴火の可能性があるかないかを考えるだけに留まっていないで,もし海底噴火が起こったら,どのような災害シナリオがあり得るかをすべて書き出して,その発生確率を評価して,リスクマネジメントに進む段階にいまはあると,私は考えます.(1115)
 
逆噴火 きょう現在の山頂火口の質量欠損は8億トンと計算できます.7月の2回の噴火でそこから飛び出た火山灰は300万トンですから,1%にも達しません.つまり,いま三宅島で進行していることは,噴火ではなく,逆噴火とでもいうべき質量欠損です.そして,その量は莫大です.
 こんごの噴火の有無を心配したり,すでに降った火山灰から泥流が発生することを心配することはもちろん必要であって,正当なのですが,それだけに目を奪われて,もっとも本質的な火山現象に目を向けないのは,おかしい.
  火山の危険は噴火だけではありません.(ちばさん掲示板への書き込み,0910)
 
ミレニアム火口 現在の山頂火口の体積は4億立方メートルに達したと思われます.質量欠損で言えば8億トンです.1983年噴火の噴出量は2000万トン,1962年は1500万トン,1940年は4000万トンでした.いまの山頂火口の欠損質量は,過去数百年にわたって三宅島が20年(あるいはその倍数)ごとに噴出してきたマグマの重さの20〜50倍にあたります.過去400〜1000年あるいはそれ以上の長きにわたって三宅島が放出してきたマグマに見合う質量欠損が,わずか1カ月で山頂に生じたと言えます.
 三宅島は,20世紀を終えるに当たって,これまでの山腹割れ目噴火を主とする時代に幕を引いたようにみえます.西暦2000年は,三宅島にとって画期的な年に当たります.何万年にもわたるひとつの火山の一生の間で起こる数少ない画期的場面に,わたしたちはいま立ち会っています.2000年7月に山頂にできた巨大な火口は,ミレニアム火口と呼ぶのがまさにふさわしい.
 陥没による山頂火口の拡大はいま現在も毎日1000万立方メートルの進行速度で継続中です.厳重な警戒が求められます.(0745)

8.05(土)

8月3日現在の火口の形状と体積 --止まらない陥没--

けさ0625と0830のNHKニュースをみて,山頂火口縁から底をのぞきたいと考えた人へ,
 火口縁に30分滞在するとして,地獄に堕ちる確率は5%です.つまり,10組のパーティーが火口縁に上がれば,死者が出る確率が50%に達します.
 このような深刻な危険がいま存在しているのに,三宅村長はなぜ,火口周辺を災害対策基本法63条による警戒区域に指定しないのだろうか?たとえば「標高500メートルより上」などと指定すれば明確だし,経済活動や人権を侵すこともほとんどゼロに近い.にもかかわらず,警戒区域指定していない現状を私は理解できない.
 今後火口縁で死者が出た場合,村長の行政責任は免れない.また指定公共機関でありながら,危険の指摘をせずに無造作に陸上映像を流した日本放送協会NHKの責任も問われよう.おもしろフジテレビとは法的立場が違うはずですから.
 すでに7.26に,私は同じことを指摘しています.(0745)

8.04(金)

2000.8.03.1345-1425の三宅島山頂火口

8.02(水)

インドネシアSemeru火山(スミソニアンへリンク)で,先月27日6時21分ころの爆発により二人のインドネシア人火山専門家が死亡して,アメリカ・スミソニアン博物館員2人を含む6人がけがをしました.→詳報英文

読売新聞の有害記事 きのう8.01のヨミウリ・オンラインに捨て置けない三宅島記事が掲載されていますので,以下に全文引用して,すべての文にコメントします.
 
>(みだし)三宅島噴火はマグマ水蒸気爆発
 
見出しのこの断定をした人は,この読売新聞記事以外,まだいません.

> 伊豆諸島・三宅島で先月起きた噴火は、マグマ本体が引き起こした「マ
> グマ水蒸気爆発」だった可能性が高いことが、通産省地質調査所の調査で
> わかり、三十一日、火山噴火予知連絡会に報告した。
 
「わかり,」までの句で述べていることが事実であることを,地質調査所サイトで確認することができます.そのあとに続く「報告した」は,たぶん事実なのでしょう.
 
>これを受けて予知連
>は、マグマは直接関与しない「水蒸気爆発」だったとした、これまでの見
>解の見直しを始めた。
 
予知連=気象庁が,委員を出してもらっている調査研究機関から報告を受ければ,(従来の見解の見直しの可能性を含めて)それを検討するのは,当然のことです.

> 三宅島は先月八日と十四、十五日に噴火したが、地質調査所は、山頂付
> 近の火山灰の成分を電子顕微鏡で分析した結果、新しいガラス状の物質が
>多く混じっているのを発見。この物質には気泡を多く含むなどの特徴があ
>ったため、マグマが急に冷やされてできる「火山ガラス」と判断した。こ
>うした点から、先月の噴火は「マグマが地下水と接触して引き起こしたマ
>グマ水蒸気爆発と見られる」と結論付けた。
 
前二つの文に誤りはありません.しかしこれらを受ける最後の文は,誤報です.「「マグマ水蒸気爆発と見られる」と結論付けた」人は,まだひとりもいません.地質調査所の宮城さんは「可能性が高い」と述べているだけです.前二文から最後の文の結論を導き出すことがたいへんむずかしいことを,宮城さん東宮さんが繰り返し述べています.さらに,この結論へのつよい疑いが安田さんたちによって提出されています.

> 予知連ではこれまで、噴火は「地下水が熱せられて爆発した水蒸気爆
>発」としていた。
 
これは,事実です.しかしこの事実が訂正された事実はありません.ですから,この記事での報道は,新しい解釈が提出されたことだけに留まるべきでした.
 
新しい事実の発見があったと断定し,さらには予知連=気象庁が見解訂正をおこなったとも受け取れる紛らわしい書き方をしたこの記事は,社会に与える悪影響がたいへんつよい有害記事です.読売新聞社は,すみやかに訂正記事を出してほしい.(0805)

8.01(火)

日本火山学会2000年秋季大会講演を申し込みました.→予稿集原稿

7.31(月)

「この地震で三宅島の噴火活動を活発化させる恐れはない」とNNN0706で福沢アナウンサーが読みました.他の民放局でも同様の読み上げをけさ聞きました.気象庁課長会見の模様をやや詳しく伝えているNHKはそういいませんから,どちらも短絡して伝えているものと思われます.
 地震がただちに噴火に直結する必然性はありませんが,地震をきっかけとして三宅島で噴火が再発する可能性を,いまの観測網で,否定できるとは思えません.上の陳述は,科学的に誤っていることが明らかです.大きな地震のあとは,山の上を見上げて噴火の危険を警戒するのがただしい身の守り方です.
 人心を安定させるためにウソを伝えたほうがよいと,NNNがもし意図的に考えたのなら,その考えを早急にあらためてほしい.ウソを伝えた事実が発覚することのほうが致命的です.最近の社会現象にそういった事例がたくさんあります.(0720/0815)

7.30(日)

三宅島中心火道のピストン沈降モデル(1110)

7.28(金)

7月22日現在の火口の形状と体積(1935)

7.27(木)

三宅島は砂時計? 4日前の7.23.1120に私は,「7.8.1841の爆発以来,三宅島山頂火口では,毎日毎日2500万立方メートル(5000万トン)の岩石が地下に落ち込んでいます」と,ここに書きました.ちばさん掲示板にも同様のことを,同じ時刻ころに,書き込みました.この事実を「発見」してすぐ書きました.
 この「発見」は,従来の火山学で知られていなかった現象です.第一発見者の私自身ですら,にわかには信じられなかった現象です.このようなゆっくりとした大規模陥没が,山頂火口で静かに何週間も継続するメカニズムは,だからいま説明することができません.
 初期の毎日の陥没は,空中写真を見比べれば,誰の目にもあきらかでしょう.たとえば,川辺さん@地質調査所が,7.9写真と7.11写真を見やすいように配置してくれています.しかし,7.14-7.15噴火以降は,火口がたいへん深くなってしまったため,日々の変化がわかりにくくなっています.悪天が続いたために,撮られた写真が少ないことも不幸です.この事情のため,7.15以降は陥没していないのではないかと考える専門家もいます.7.15以降,写真測量ができる垂直写真が7.22に撮られたひと組しかないことが,これを明らかにすることを妨げています.
 私がみるに,7.25.2100時点での専門家の意見分布はつぎのようです.
1)陥没は,7.8.1841噴火と7.14.0414-7.15.1300噴火のときだけ起こった.
2)7.14以前は,噴火なしに陥没が進行したが,7.15.1300以降は止まっている.
3)7.8.1841から7.22まで陥没が毎日進行した.しかしそのあと止まったらしい.
4)7.8.1841から毎日陥没が進行していて,それは現在も続いている.
 気象庁・噴火予知連は,基本的には2)の解釈をとっていて,4)の可能性を若干留保しているように,私にはみえます.これまで何回も出された噴火予知連の見解文には,山頂火口の陥没のゆっくり進行をにおわせる文をまったくみつけることができませんから.
 4)を考える人の中にも,このまま陥没が進行すると何が起こるかわからないと強い警戒感を示す人(私はこれです)と,陥没は遠からず止まる.もう噴火はない,と楽観的見方をする人の両極端がいます.これらの中間意見をもつひともいます.
 以上,専門家の意見分布をできるだけ公平に書いたつもりですが,4)であるとみて,そしてそのことに強い警戒感をもっている私の現状把握を最後に少し書きます.いま継続している毎日一回あるいは二回の地震集中と,その最後に起こる山上がりの傾斜変化ステップが終わらない限り,陥没の進行も終わらない.陥没が進行すればするだけ(未知の)危険が増すから警戒を強める必要がある.(1355)

7.26(水)

三宅村長にお願いします.鉢巻林道より上を,災害対策基本法63条にもとづく警戒区域に指定することをご検討ください.上には誰も住んでいないのですから,警戒区域に指定して立入りを禁じても,国民の基本的人権を侵すことにはならないと考えます.このまま何もせずに放置して,火口縁で死者が出た場合,安全配慮義務違反を問われるのではないかと私は心配します.(1930)
 
フジテレビ・スーパーニュースをみました.事前の番組案内によると,
激震の伊豆諸島で一体何が!?三宅島頂上火口にカメラ初潜入
・・・特殊ロボットが水深80メートルで亀裂を発見!
1830から,途中コマーシャルを挟んで,10分と4分30秒のプログラムでした.
「火口の姿が小さな安心感を与えてくれた」
「大きな滑落噴火の可能性は少なくなったという」
このナレーションは,まったく科学的でない解釈です.いま山頂火口縁から火口底をのぞく行為はたいへん危険です.なぜなら火口底の陥没が,いまも続いているのですから.7.8と7.14-7.15噴火のときにだけ陥没したのではありません.毎日陥没しています.カメラが山頂にはいった7.20にこの事実は,まだ誰にも理解されていませんでした.このプログラムをみた視聴者が,山頂火口縁に立ってみようと思うことを恐れます.行かないでほしい.私は,火山で人が殺されることを好みません.
 FNNがこの山頂火口映像を無造作に興味本位に放送したことは,雲仙岳で1991.5.24に発生した初回火砕流の堆積物のホームビデオ映像を火山学者がテレビ各社に渡して,それがお茶の間に何回も届けられた事実を想起させます.どちらも,テレビ放送では,撮影行為の危険についての警告がまったく付されませんでした.雲仙岳のとき,そのあとでどういう結果が待っていたかは,みなさんご承知のとおりです.
 取材対象との交渉で,「かけひき」はするが「とりひき」はしないと言ったアナウンサーがTBSにむかしいました.プログラムを見終わったあと,私はこのことを思い出しました.取材する側だけでなく取材される側にも,同様の倫理観が求められると気づきました.ジャーナリストとの緊張関係を常にもっていようと,私は自分の気持ちを引き締めました.
 プログラムの最後で,安藤優子アナウンサーが「幅10cmの噴火口であれだけ海水が変色するわけですからね」と締めました.このニュースプログラムのどこに価値があるのかを,自分がまったく理解していなかったことを露呈したわけです.これは愛嬌発言だったのでしょうか.いや海底映像は7.20についで二回目の(訂正)放送だったのですから,そうではないでしょう.この局のニュースづくりの姿勢にどこか本質的問題があると言うべきでしょう.(1900/7.27.0740)→有珠山での4.2火口泥流FNN撮影放送事件
 
三宅島山頂火口の変遷のページに写真をいくつか追加しました.思ったよりずっと頻繁に火口底が撮影されていたことを知りました.日にちが違えば,火口底が深くなっていることをみてとれます.内壁が崩れて火口内を埋めれば,底は浅くなるはずですが,逆に深くなっています.底がゆっくり下がることによって,内壁が徐々に崩れているのだと理解できます.
 7.8以降,毎日一回あるいは二回起こる地震連続の最後の瞬間に,山上がりの傾斜変化ステップがみられます.そのときに当初30メートルくらい,いま10メートルくらい,火口底が下がっているのだと思います.常時ずるずると下がっているのではなく,10時間から20時間の時間差をおいて段階的に下がっているのだと思われます.傾斜変化ステップは,7.8から7.25までの18日間に約25回ありました(気象庁ページにある防災科技研資料2と3).
 陥没量は,一回の傾斜変化ステップあたり1200万立方メートルでほぼ一定のようですが,火口の拡大による体積増加のため,火口底の下がりが最近小さくなっているようです.陥没の進行が止まった証拠はみつかりません.まだ続いているものとみられます.
 この先何が起こるか,この陥没がいつ止むか,予想するのはたいへんむずかしい.砂時計のようなゆっくりとした大規模陥没が火山で起こることを,現代火山学は知りませんでしたから.(1505)
 
7.22撮影の写真アジア航測のページに整理されて,たいへん見やすくなりました.(1330)

7.25(火)

アジア航測7.22撮影の垂直写真がちばさん掲示板で公開されて,三宅島山頂火口の現状がようやく把握されつつあります.(0715)→三宅島山頂火口の変遷

7.24(月)

海洋情報研究センターによる海底火山の説明がわかりやすい.1989年伊東沖噴火のムービーもある.
 伊東沖噴火は,水深95メートルから起こりました.いま心配されている神津島東方海底の深さは,200-250メートルだと思われますので,マグマが海底に現れても爆発しないだろうと思われます.海面の変色として人に気づかれるのでしょうか?(1100)

7.23(日)

不思議なこと

あまり気づかれていないことですが,7.8.1841の爆発以来,三宅島山頂火口では,毎日毎日2500万立方メートル(5000万トン)の岩石が地下に落ち込んでいます.一辺100メートルのサイコロが一時間にひとつずつ地下に落ち込んでいる計算になります.この陥没進行は驚くべきほど一定の速度で起こっていて,噴火の有無にほとんど関係していません.そもそも7.14-7.15噴火で放出された火山灰はわずか300万トンでした.1時間半の陥没量と同量です.
 この陥没はいま現在も続いています.火口底の高さが海水準にほとんど等しくなりました.このあと何が起こるのだろうか?三宅島では,いま厳重な警戒が必要です.(1120)三宅島-神津島2000年ファクト
 
三宅島山頂に,朝からしばしばレーダーエコーがみえています.(1005)
 
山頂火口の欠損体積は3億5000万立方メートル.1990年からの噴火で雲仙岳に新しくできた溶岩ドームがすっぽりはいる大きさです.わずか二週間でできました.質量では7億トン.これだけの質量欠損すなわち陥没は,過去1000年間日本列島で起きたことがありません.
 世界に目を移すと,1968年6月にガラパゴスのフェルナンディア島で起こった山頂カルデラ床の陥没を思い出します.このときは,10〜20億立方メートル(20〜40億トン)の岩石が陥没しました.(0820)→三宅島-神津島2000年ファクト
 
ふじたさん@アジア航測による三宅島山頂火口の最新情報.7.22JNN映像の判読による.三宅島山頂火口はただならぬ状況を呈しています.これから何が起こるか,予断を許しません.厳重な警戒が必要です(0820)→三宅島山頂火口の変遷

7.22(土)

神津島の東で注目されている海底の深さは,どうやら200メートルくらいのようです.安心と不安のちょうど微妙な深さだ.(1010)

三宅島の地下 酒井慎一さん(東京大学地震研究所)が作成してウェブで公開している三宅島雄山の地震活動に,地形と噴火の情報を加筆しました.(0840)


これ以前