2000年7月29日(土) 【夕総】直径1.2キロ山頂に巨大な“アリ地獄”  三宅島・雄山 陥没止まらず  三宅島の雄山で今月八日に起きた山頂の陥没は、その後も拡大して いる。陥没口は深さが増すに従って周囲の岩石が崩れ落ち、巨大な “アリ地獄”のようだ。  陥没の深さは当初、約百八十メートルだったが、一日に一、二回程 度の割合で地震が起き、山が瞬間的に膨張することによって崩落を起 こす状態が続いている。二十九日までに、すり鉢状の穴の深さは四百 五十メートル、直径はほぼ一・二キロに達し、陥没した体積は三億立 方メートルを超すと推定される。  東京大学地震研究所の中田節也教授は航空写真を見て「陥没口は、 山頂の平らなカルデラ部とほぼ同じ大きさまで広がっている。カルデラ北側の標高八一三・七メートルの最高点が崩れ落ち るのも時間の問題だ。また、泥流が流れた筋がいくつも見え、ここが泥流の発生源になっているのが分かる」と説明してい る。  中田教授はこの陥没について「雄山地下のマグマが地中深く下がって空洞ができたために起きた。その後もマグマが下が るたびに、ちょうど、ピストンを引き下げるようになって空洞の圧力が低下し天井に当たる山頂部が引っ張られてずり落ち ているのではないか」と推測する。穴の深さは雄山の高さの半分を超えている。可能性は低いが、陥没が海抜ゼロメートル 程度まで達すると、地下水が流れ込んで水蒸気爆発などが起きることも考えられるという。 【写真】平らなカルデラ部が陥没して赤茶けた巨大な穴ができた三宅島雄山の山頂部。右下には、山肌を流れた泥 流の跡が見える=28日、東京・三宅島で、本社ヘリ「わかづる」から(石原佳子撮影)