群馬大学教育学部早川研究室提供 2000.9.21.1010設置 浅間山磐梯山三宅島有珠山岩手山

浅間山2000年9月異常は,終わりました.


ご意見・ご質問を電子メールでお受けしています.どうぞ,お気軽にメールください.宛先は,hayakawa@edu.gunma-u.ac.jpです.いただいた質問をここで公開させていただくことがあります.公開してほしくない場合は,その旨明記してください.

マスメディアの方へ:電話取材・面談取材は,お受けしていません.音声による個別コメントは出しておりません.質問は電子メールでお寄せください.できるだけすみやかにお答えします.


10.17(火)

浅間山火山対策会議(会長・本藤一衛佐久地方事務所長)は十六日、県佐久合同庁舎で開き、浅間山(二、五六八メートル)の火山性地震の沈静化に伴い現在の入山規制を緩和し、規制強化した九月十九日以前の状態に戻すことを決めた。信濃毎日新聞

10.10(火)

軽井沢測候所が定期火山情報10号を発表しました.9月25日に出した最後の火山観測情報以降,浅間山はすっかり落ち着いているそうです.過去10年間の平穏が戻っています.9月の異常時でも,有感地震はひとつもありませんでしたし,火山性微動もありませんでした.楽しい秋の山と高原をお楽しみください.わたしは,来週末に野外授業を浅間山で実施します.来月ももう一度行きます.

9.25(月)

火山観測情報9号は,終息宣言です.測候所がこれ以上明確に終息宣言することはないと言えるほど,明確に書かれています.平常時のレベルに戻った,注意はいらないと明記しただけでなく,今回の異常ではもう火山情報を出さないとまで言ってる.

このように,浅間山の火山性地震の回数は,平常時のレベルに戻ってきており,とく
に注意を要する状態は観測されなくなりました。このため,19日発表の臨時火山情
報第1号に関連して発表してきた火山観測情報は,本日の第9号をもって中止します。

19日の臨時火山情報1号を受けて小諸市が拡大した4キロ警戒区域は,この火山観測情報9号を根拠にもとの2キロ警戒区域に戻してよいと思われます.秋の澄んだ空気の浅間山を,みなさん,どうぞお楽しみください.

どうだろ,地元自治体主催で安全祈願登山などしないのかな?わたしでよければ,お手伝いします.

9.23(土)

異常は終息へ 地震回数が順調に減っています.一日二回の火山観測情報発表が,一日一回になり,ついに明日は休みで次は明後日の隔日発表になりました.地震回数だけでなく,火山観測情報の発表数も,終息傾向を示しています.
 10月3日のシェルター設置は予定通りできるかもしれない.見物に行こうかなあ.あっ,だけど,まだ登山道は閉鎖中です.登山者はまだ登らない方がよい.みつかると罰金10万円で前科者.明日は日曜日で,雨も上がるかもしれないけど,まだ危ない.あと一週間は登らないで辛抱してほしい.

9.21(木)

ただしい火山対応 いまの浅間山異常でもっとも考えやすい災害は,山頂火口で爆発が起こって岩が周囲に飛ぶことです.1983年4月8日の爆発は,まったく前兆なしに,いきなり爆発して直径30センチの岩を火口から2キロの地点まで噴き飛ばしました.教科書的には,ブルカノ式噴火と分類される様式です.ブルカノ式噴火をするには,融けたマグマがとくに必要ではないようです.ブルカノ式噴火は,地下水が熱せられて起こる水蒸気爆発の一種だとみる見方があります.わたしはその考えが好きです.もしそう考える場合,爆発の直前に無感地震が有感地震に変わったり,微動が発生するなどの前兆が期待しにくいと考えられます.そのような前兆を経ずに爆発が起こる心配をするべきです.じっさい1983年4月8日はそうでしたから.
 おとといからの異常がこのまま萎えていく場合は,1983年4月8日のようなブルカノ式噴火に注意を集中するのが妥当です.異常が増大しない限り,それ以上の心配は無用です.ただし,浅間山のブルカノ式噴火では,岩が火口から4キロまで飛びます.ブルカノ式噴火が頻繁に起こった20世紀前半の経験です.峰の茶屋と鬼押出しはその円周上にありますから,注意が必要です.(1350)
 
過剰反応 学生に聞いたり,生協で買い物をしたりして,前橋市民の声を聴取すると,みなさんずいぶんと心配していらっしゃるようです.これは過剰反応です.有珠山や三宅島のニュースから連想して,火山の異常にみなさん過敏になっています.そんなにどきどきする必要はありません.前橋市への浅間山の危険が9.19臨時火山情報で増大したとは思わないのが,科学的な判断です.知的な人は,そうみてほしい.
 前橋市は,浅間山の東50キロの地点にあります.前橋市への浅間山の危険は,細かな火山灰がすこし降るかもしれないだけだと考えて日常生活するのが,ほとんどの人に適当です.1983年4月8日の浅間山爆発で前橋に灰が降りました.しかし,その厚さはわずか0.06ミリでした.葉もの野菜だって,ひと吹きすれば出荷できるくらいの量だった(かな?).
 前橋市とその周辺市町村は,1783年の噴火のとき利根川を下った熱泥流で多数の犠牲者を出しています.このことをいま思い出すのはよいことですが,その再来をいま心配するのは愚かです.もし心配するなら,(この異常発生前の)先週も心配すべきだったと言えましょう.そんな心配などせずに,もっとおおらかに生きていくのがよいと思われます.
 ただし土地を買うなり,家を建てるなりの長期的投資をするときは,1783年災害を念頭に置く考えもありましょう.私個人は,職業柄,それを念頭に置かざるを得ません.そのことが心配されるくらいの異常が発生したあとに私が引っ越すことは,社会的影響に配慮してむずかしくなるだろうと予想しています.ですからわたしは,火山災害のリスク回避のために,ふだんからふつうの人の数倍投資しています.
 いまは,マスメディアが火山噴火をいつもの基準よりずっと大きく何回も取り上げます.これは,ぜひあらためてほしい.平常時の基準で紙面の大きさを決めてほしい.ニュースの時間の長さを決めてほしい.火山の異常を伝えることで,部数をのばそうとか,視聴率を上げようとか考えないでほしい.マスメディアは,公器としての自覚を持ってほしい.
 ただしこれを機会に,浅間山のリスクと恵みを地域住民に知らせるのはよいことです.そう考えるメディアと地方自治体には,お手伝いさせていただきたいと希望します.(1135/1305)

9.20(水)

小諸市がとった迅速対応 小諸市がきのうとった対応をとりいそぎ紹介します.
 9.19.0940の火山観測情報1号のあと1130に,山頂ふきんにいた登山者にたいして山から下りるようにスピーカーで呼びかけた.登山者は,すなおにそれにしたがって下山したらしい.
 9.19.2050臨時火山情報1号のあと,ただちに災害対策基本法(たぶん)63条で登山規制した.これが現在も継続している.市職員が登山口に立って,説明しているという.
 小諸市は,山頂から500メートル地点までを除いて,登山規制を10月から解除する予定でいま準備しています.今回の異常でその実現が危ぶまれますが,このまま順調におさまれば予定通り10月に規制を解除してよいと思います.そのためには,無感地震の数が十分小さくなったことがわかる火山観測情報が出ることが必要です.(0730/1925/9.21.1155)

9.19(火)

浅間山にきのうから震源集中が起こっています(火山観測情報1号).山頂への登山はいま見合わせるのが賢明です.(1100)