山体崩壊による岩なだれの堆積物
Edifice Collapses and Debris Avalanches
 
 山体崩壊による岩なだれの発生は,重力的に不安定になりやすい大円錐火山にとって避けがたい宿命である.その証拠に,ほとんどの大円錐火山の山麓で岩なだれの堆積物を認めることができる.岩なだれ堆積物は大円錐火山の裾野の主要構成単位のひとつである.
 アメリカ合衆国ワシントン州のセントヘレンズ火山は,1980年5月18日早朝,火山体内部に震源をもつ地震(M5.2)の発生と同時に,山頂を含む2.8km3の山体を北側へ滑り落とした.生じた馬蹄形凹地の内部にはその後溶岩ドームが生じた.
(Johnston Ridge Visitor Center, Mount St. Helens, Washington)  
 縄文時代晩期(2400年前)に富士山から岩なだれが発生して,現在の御殿場市・裾野市・三島市に大被害をもたらした.富士東麓の須走口登山道と御殿場口登山道に挟まれた斜面が薄く広く剥離して発生したらしい.富士山頂を囲む等高線がそこだけへこんでいる.
(静岡県小山町須走)
 有珠山は,弥生時代(2000年前)に南西側に崩壊して善光寺岩なだれを発生させた.この岩なだれの規模は小さいが大きな流れ山が多数ある.
(伊達市若生)
 岩手山麓には岩なだれ堆積物が何枚もある.岩手山が過去に何度も山体崩壊を繰り返したからである.この小岩井岩なだれ堆積物は洞爺火山灰を含む厚いローム層に覆われている.約12万年前に起こった山体崩壊の堆積物だ.
(岩手県滝沢村鵜飼)