噴煙から降下するテフラ
Tephra Fallout from Eruption Clouds
 
 火山爆発のなかには,既存の火山体を破壊するだけで地表にマグマがあらわれないものもある.これを水蒸気爆発という.水蒸気爆発は,マグマから間接的にもたらされた熱によって地下水が沸騰して起こる.噴出物のほとんどは,地下で熱水変質した火山粘土である.

 水蒸気爆発のマグニチュード上限はM3.0付近にある.それほど大規模なものではないが,ときに強い爆発が起こって巨大な岩塊が空中に投げ出される.火口から3km程度まで到達することがあるので,防災面での注意を怠ってはならない.

 草津白根山は,1万9000年前からブルカノ式噴火と水蒸気爆発を繰り返している.火口の近くでは,青黒色の火山砂と淡色の火山粘土層からなる噴火堆積物の厚い互層がみられる.休止期間に堆積したレスが占める割合は全体の1/10以下である.

 "7L"は,1万3500年前のブルカノ式噴火で堆積した火山砂である.その上に噴火堆積物が8m累重している.その2/3が水蒸気爆発による火山粘土である.
 左下方には,弾道軌道を描いて着地した直径1mの溶岩塊が見えている.
(草津白根山湯釜の南東1.1km; Holocene steam-explosion clay and vulcanian sand from Kusatsu Shirane)

 

 湯釜から1882年8月6日に起こった噴火で堆積した"14W"白色粘土層が地表のすぐ下にある.それは腐植に富んだレスの上に堆積しているから,それ以前の噴火記録が草津白根火山にまったくないことと調和的である.1882年以前の草津白根火山は,数年おきに噴火を繰り返している現在と違って,1000年程度噴火が途絶えた静かな火山だった.

 腐植に富んだレスの下には火山粘土と火山砂の互層が120cmあり,2000年前ころに水蒸気爆発とブルカノ式噴火が頻発した時代があったことがわかる.最下部の暗緑色"13D"火山砂がよく目立つ.その下には,ふたたび腐植に富んだレスがある.

 草津白根火山は1000年程度の休止期と200-300年の噴火期を繰り返す火山である.1882年以降に堆積した噴火堆積物の厚さは過去の噴火期の堆積物にくらべてまだ薄いから,今後もしばらく現在の噴火期が継続すると考えるべきである.
(草津白根山湯釜の北西1.2km; The 1882 clay from Kusatsu Shirane)
 水蒸気爆発の火口がしばしば開く草津白根山湯釜.いまは深さ約30mの水がたまっている.ただし火口は湯釜の外に開くこともある.不整合関係で水釜に堆積している白い火山灰は1939年のもの.

 草津白根山の1939年4月24日12時20分爆発による降下火山灰の分布

 草津白根山の1882年8月6日14時爆発による降下火山灰の分布

 燧ヶ岳の山頂にある御池(みいけ)溶岩ドームが生じた噴火の末期に降下した火山粘土.6世紀に榛名山から飛来した伊香保軽石(FP)の上に10cmのクロボクを挟んで重なっている.史料と照合すると,噴火は16世紀前半に起こったと思われる.
(福島県檜枝岐村硫黄沢)

 那須岳でも,草津白根山とよく似た火山粘土と火山砂の互層をみることができる.
(茶臼岳の東北東1.0km)

 伊香保軽石(FP)の上12cmに1408年の白色粘土があり,厚さ2cmのレスを挟んで,1410年の青黒色火山砂が重なる.
(那須国民休暇村の南南東400m)