噴煙から降下するテフラ
Tephra Fallout from Eruption Clouds
 
ヘクラはアイスランド南部にある.アイスランド大学のソラリンソンが,この火山から噴出したテフラの層序と分布を1940年代に詳しく調べた.これがテフロクロノロジー研究の始まりとなった.ヘクラは,アイスランドの火山としてはめずらしくプリニー式噴火を何度も繰り返した経歴をもつ.テフロクロノロジー研究がここで花開いたのは,この島特有の寒冷湿潤気候下でテフラがよく保存されていたせいでもある.
 ヘクラから北北西へ9km離れた地点のH3テフラは,軽石礫ばかりからなる.火山灰はほとんど含まれていない.

 いくつか見える黒色の岩片(矢印)は,マグマが火道を急上昇するときに壁からもぎ取ったものである.小さな軽石礫は白いが,大きな軽石礫の内部はサーモンピンクに色づいている.軽石がまだ高温状態のときに大気中の酸素と結びついて酸化したからである.
(Hekla, Iceland)
 H3テフラは,ヘクラから184km離れたミーリで厚さ12cmの白い火山シルト層として露出する.H3の下20cmに認められる黒いテフラはH4である.H3の噴火は2800年前,H4の噴火は4000年前に起こった.テフラを挟んでいる褐色の地層は,風塵が堆積してできたレスである.
(Myri, Iceland)


 H3テフラの接写.シルトガラスばかりからなる.
(Myri, Iceland)


 H4テフラの接写.最下部は白い流紋岩シルトガラスだが,主部は黒い玄武岩シルトガラスからなる.
(Myri, Iceland)