従来の研究経過

研究分担者である小山真人が,平成10〜11年度に科学研究費―基盤研究(C)古記録のデータ欠落期マッピングにもとづく歴史時代の噴火史・地震活動史の再検討(研究期間:2年間,研究者氏名小山真人,研究経費:220万円)を受け,日本の古代〜中世における現存記録密度の消長を明らかにしつつあり,その過程で富士山の噴火史を再検討をしている.

研究代表者である早川由紀夫は,ことし1999年に「過去2000年間の日本の火山噴火カタログ」を英文で発表し,約400の噴火の発生年月日・規模・死者数・文献史料などを示した.本研究計画は,ここに示された発生年月日や規模などを,日本史学者の本格的援助を得て,ひとつ一つ丁寧に検証して論述していくことに等しい.

文献史料をもちいて過去の地震を研究する史料地震学にいま新しい気運が高まっている(たとえば1999年『地学雑誌』108巻4号は「特集:次世代の史料地震学」である).じつは,研究代表者の早川と研究分担者の小山はどちらも(ほんらいの専門は火山学であるが)その気運隆盛に一役買っている. 

史料地震学と史料火山学は,同じ文献史料を研究対象にすることが多い.文献史料を書き残した古人は地震と火山噴火をほとんど同じ種類の天災として認識していたらしいからである.したがって,史料地震学の進展と歩調を合わせていま,史料火山学を進展させようと努力することは効率的であるし,高い達成度を期待することができる.

研究業績にあげたように,火山学者3人(早川・林・小山)は,富士山・伊豆大島・浅間山・寒風山・十和田湖などで個別の噴火についてあるいはその火山全体の噴火史についての研究成果をすでに公表している.この研究計画は,それを日本史学者の目でチェックし,さらに同様の研究を日本全国の火山に広げるものだと理解してよい.