12.28 サウスポイントの風景(田村知栄子)

 ベッキーに集合して,サウスポイントに向かう.今日の目的はグリーンサンドビーチだ.サウスポイントへは,11号線からサウスポイントロードを進む.サウスポイントロードに行く途中に,マークトウェインのモンキーポッドの樹がある.一目見ようと注意していたのだけど,結局見過ごしてしまった.残念・・・.サウスポイントロードは,南へまっすぐまっすぐのびている.一車線だけど,対向車のドライバーは親切で,道いっぱいまで避けてくれる.右も左もなだらかな丘に牧場が続いている.ところどころに茶色と白の牛が,草を食べたりひなたぼっこをしたり.なかなかかわいい.しばらく進むと右手に大きな風車がいくつも見えてきた.カマオアの風力発電所だそうだ.風車に“MITSUBISHI”の文字を見て,なんだか不思議な気持ちになる.ガイドブック(「地球の歩き方RESORT ハワイ島」ダイアモンド社)によると,「1987年7月7日に完成したこの発電所は,1年に1億8,000万kW/h,3,000戸分の電気を供給している.」のだそうだ.まわりには民家が少ないから,ずっと遠くまで運ばれてるんだろうな.とりあえず写真を撮るのは帰りにして,車窓からまじまじと眺める.さらに進んで行くと,左手に変な木が見えてきた.サウスポイントの強力な東風のせいか,根元から西の方向に曲がっている.しかもかなり大きい.これはすごい!!これも帰りにしっかり写真に撮ろう.とにかく今は,サウスポイントを目指す.

 10分ほど走ったろうか,道は行き止まり.その先はもうすぐ海.車を止めて外に出る.風が強い.東よりの風がビュービューふいている.風車があったことを改めて思い出す.さすがサウスポイントだ.「南のはしっこに来たぞ!!」って,それだけでうかれてしまう.右も左も延々と海が続く.南のはしっこは,10メートルくらいの崖になっていて,そのまま海に落ち込む.釣りをしている人も多い.恐る恐る下をのぞき込むと,魚の姿がしっかりと見える.黄色と黒の魚がちょろちょろ泳いでいる.こんなにはっきり見える.これはスゴい.日本じゃ考えられない.海岸には滑車のついた骨組みが立っている.ここではカジキなんかも釣れるらしい.あいにくそんな大物を釣っている人はいなかった.ちょっと残念.車を止めたところから,左手の方には,なにやら石を積み上げたものが見える.「KALALEA HEIAU」と呼ばれる,ハワイ人の神殿跡だ.小さな祭壇が組まれて,ヒョウタンなんかがぶら下がっている.今も信仰の対象になっているらしい.南のはしっこだもの,それもうなずける.しかし,実はそれだけではない.ここには,「CANOE−MOORING HOLES」というものがある.海岸にある岩に,ぽっかり穴が開けられている.わたしの腕が通る.これは,タヒチからハワイにやって来た人々が,カヌーを止めるために開けた穴なのだそうだ.タヒチからはるばるハワイまでやって来た人たちのことを考えながら,海岸に降りる.この辺りでは,波打ち際まで降りて行ける.さすがに外洋の波は荒い.ところどころにサンゴが打ち上げられている.小さなカヌーで何千キロも海を渡って来た人の気持ちは,なかなか想像できない.

 さて駐車場に戻る.そろそろ出発だろうか? 他の人たちは,石を取ったり,露頭を見たり.まだ時間は取れそうだ.わたしも露頭を眺めることにする.駐車場のわきには,1.3メートルほどの崖ができていて,真っ赤な赤土がのぞいている.細かい砂やサンゴのかけらが混じっている部分は,「TSUNAMI」の跡だそうだ.ハワイ諸島では大きな地滑りが起こるたびに,大規模な津波がおきるんだって.「TSUNAMI」という言葉もしっかり定着していて,町の本屋さんでも「TSUNAMI」という本を見かけた.駐車場の辺りをうろうろしていると,おもしろいものを見つけた.現代人のものと思われるペトログリフ.岩に,「魚を釣る人」が掘ってある.掘ってある面が新しいから,きっと最近のものなのだろう.これがあと何年もすると,ちゃんとペトログリフとして記録に残されるのだろうか? ちょっと楽しみ.

 みんなが集まりはじめた.わたしも記念に取ったサウスポイントの石をおみやげに,車に乗り込んだ.いよいよグリーンサンドビーチに向かう.