12.25 キラウェア・カルデラ(武井伸光)

 キラウェアカルデラを一望できる Volcano House Hotel の南側の展望台に行きます。

 展望台の南には, 北東−南西方向に伸びる楕円形(長径 5km ほど)のキラウェアカルデラが広がります。カルデラ床はずーっと平らで,スラブ(=板状)パホイホイが薄くだらだらと流れたのだな,と見てとれます。

 カルデラ縁の北西の Uwekahuna Bluff(=崖)には崖の中間くらいの高さから崖錐堆積物が見られます;が,見れるのは1ヶ所だけで,崖の他の部分は 切り立った正断層崖です。崖錐が少ないことから,キラウェアカルデラはそ んなに古いものではない,と早川先生の講義が始まりました。

 カルデラの西縁絶壁に立つ HVO の建物の下,階段状の地形があります。 その右下に,クリーム色の Uwekahuna Laccolith(餅盤)が見えます。周辺の 地層(溶岩流)に調和的に水平に併入しているのが分かります。

 前方にみえる凹地はハレマウマウ火口 (Halema`uma`u Crater) です。 火口周辺は,ゆるやかに火口に向けて傾斜している感じです。火口壁の南西側に は白色の部分があります。火口の東縁にある展望台から見ると分かるのです が,硫化物が昇華しているようです。

# Halema`uma`u とは, 2つの意味があり,「シダの家」「(火山の女神である)ペレの永遠の住みか」だそうです。確かに,シダはキラウェアカルデ ラ周辺では多く見られました。

 右手後方には雲をいだいた Mauna Loa(ちなみに Mauna, Loa とはハワイ語 でそれぞれ mountain, long の意だそうです)が見れます。 山腹に暗く見えるのは Ke`amoku Lava Flow です。 East Rift Zone である稜線を8倍程度の双眼鏡で見ると,スコリア丘が見られます。そこから流れたように見れる溶岩流もありました。

 雄大な景色に感動してバシバシ写真を撮ってから,車に戻ります。

 今度は,Crater Rim Drive を反時計回りに走ります。 ビジターセンターを過ぎて 800m ほど走ると周辺の植生ががらりと変わり,灌木がところどころに生える乾燥した土地に変化します。

 ビジターセンターより 5mile(8km) くらい走った所で道路の右側に車を止めます。 Kilauea の Southwest Rift Zone の火口側起点の部分に立っているのです。辺りには北東−南西方向の走向を持つ噴火割れ目が目立ちます。割れ目は,深さ=地表より 5m くらい,開口幅=(広い部分で)30m くらいです。割れ目の底部分には, 1971年9月の Pahoehoe 溶岩がカルデラに向けて溢流した様子が見られます。

 そこから 1971年の溶岩の上を通り,キラウェアカルデラの西縁に立ちます。眼下には SW Rift Zone から連続する方向を持つ,ハレマウマウ火口に向けて直線状に伸びる高まりが見られます。スパターランパート (Spatter rampert)でしょうか? そこから両側にスラブ(=板状)パホイホイが流れ出しているのが分かります。 "HVNP Recreation Map" によれば,これは 1974年の溶岩流です。この溶岩流は,南西側からハレマウマウ火口内に逆流しているようです。

 SW Rift 周辺の層序は下のようになります。

1971 lava(Pahoehoe)     ←西 東→
-------------------  |
reticurite           | こちら側はKilauea Caldera
-------------------  |←カルデラ壁
1790 Breccia	     |
水蒸気爆発に伴うもの |-------------
                     |1974 Pahoehoe

 ここで,レティキュライト (reticurite) とは,気泡が互いに連結して三次元の網目集合体となったスコリアです。よく発泡しているが水に浮かべると沈むという特異な性質をもちます。実物を見てもらえば良いのですが,「茶色いスポンジ(食器洗い用)」と形容すればいいでしょう。大きさは,大きいもので径 3cm ほどです。 非常に壊れやすく,指で押すだけでクシャッとつぶれてしまいます。投げ上げると,たちまち風下に飛んでいってしまいます。

 車に戻り,Crater Rim Drive を反時計回りに回ります。 バスが何台も平気で停車できそうな広い駐車場(3列)で停車。ハレマウマウ火口東縁の展望台まで 500m ほどを歩きます。 歩いてゆく道の周辺には 30cm 程度の(大きいものは 1m にもなる)角礫〜亜角礫が散在しています。これらは 1924年5月の水蒸気爆発によりハレマウマウ火口から放出されたものです。また,蒸気を吹き出しているクラックもあります。クラック周辺には白色皮膜状の昇華物があります。勇気ある人たち(正芳さん,庄八さん,東宮さん,成夫くん,私)がなめて見たところ,最初は苦く,そして非常に酸っぱいものでした。

 ハレマウマウ火口を東側の展望台から見下ろします。火口径は 1km 程度で,周囲のキラウェアカルデラと同じように北東−南西方向に細長い楕円の形をしています。火口床は平坦で,中央部にホーニト Hornito(小規模なスパターコーン)が3コ見られます。火口壁には2段の水位線(現在の高さに比べ,火口縁から60%/80%低下,写真より)があり,これらは 1967-1968年の時の溶岩湖面の高さを示しています。火口壁,床ともに,白色になっている部分があり,たぶんなめてみたのと同じものだと思われます。 訪れたのがちょうどクリスマスだったこともあるのか,火口縁には献花,魚,ワインがありました。前述の通り,ハレマウマウには「(火山の女神である)ペレの永遠の住みか」という意味があるそうなので,女神への供物なのかもしれません。

 ハレマウマウ火口の北東側には,SWリフトゾーンと同じ走向に伸びるスパターランパート群が見られました。

 駐車場まで戻ると,車の後ろをハワイ特有のカモであるネネ(Nene)が2羽ヒョコヒョコ歩いています。早速撮影。よく見ると,2羽とも右脚に金属の脚輪をつけています。人間に慣れているのか,カメラを持った 12 人組に取り囲まれても動じるところはありません。

 ネネにどいてもらわないと車を出せませんので,しばらく待って,車に乗り込みます。