桜 島

定期火山情報
第10号

                         平成12年10月10日10時
                         鹿児島地方気象台発表

 火山名:桜島

1.概   況
 9月の桜島南岳の活動は、上旬から中旬は比較的静穏な状態で経過しました
が、下旬は噴火活動がやや活発でした。1ヶ月間の噴火回数は21回、そのうち
爆発的噴火(爆発)は1回でした。
 10月に入ってからは7日16時42分に噴煙高度が5,000mを超える爆発がありま
した。この爆発により桜島町では車のガラスを破損する被害がありました。
 10月に入り10日9時現在、噴火は5回で爆発はそのうち1回でした。
 今後の火山活動には十分注意して下さい。

2.噴火の状況
 9月の噴火回数は21回(前月9回)で、爆発はそのうち1回(前月2回)で
した。特に爆発は28日までなく、無爆発継続日数は8月28日から通算32日でし
た。
 29日20時14分の爆発は体感空振(小)を伴い、火山雷を42回観測しました
が、爆発音、噴石等はありませんでした。火山雷は今年2月26日20時03分の爆
発以来です。
 9月の日別の噴火・爆発回数は次表のとおりです。

9月の日別噴火・爆発回数
   日   4 7 9 17 19 23 24 25 26 29 合計
 噴火回数 1 1 2 1 2 1 2 1 9 1 21
 爆発回数 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1  1
 注)爆発は噴火の一形式であり、噴火回数の中にも含まれています。

3.遠望観測
 21回の噴火のうち噴煙を観測できたのは20回で、噴煙量はやや多量1回、中
量19回でした。火口縁からの噴煙高度の最高は、9日15時28分の噴火の3,000
mでした。

4.震動観測
 火山性地震は中旬前半が少なく、その他の期間はやや多い状態で経過しまし
た。火山性微動は月の初めと中旬前半が少なく、その他の期間はやや多い状態
で経過しました。
 震動観測点B点(南岳火口から北西 2.3km)での9月の火山性地震の回数は
788回で、前月(350回)より増加しました。また、火山性微動の出現時間は月
合計42.9時間で、前月(58.7時間)よりやや減少しました。
  
    9月の火山性地震・微動回数
            上 旬 中 旬 下 旬 合 計
  火山性地震回数    243  150  395  788
  火山性微動回数    264  232  237  733
火山性微動出現時間(h)  18.8  13.2  10.9  42.9

5.降灰の観測
 気象台における降灰の観測では、9月の降灰日数は13日で、月間の降灰量は
84g/uでした。

 気象台における9月の日別降灰量(g/u)
  日  5 6 7 8 9 12 13 14 19 20 21 22 27 合計
 降灰量 11 17 2 10 1 20 1 1 0 8 11 1 1 84

鹿児島県消防防災課によると、9月の1ヶ月間で降灰の多かった場所と降灰
量は次のとおりです。
 @鹿児島市有村   832 g/u    A鹿児島市湯之   759 g/u
 B桜島町赤水    549 g/u    C鹿児島市高免   460 g/u

6.火山情報の発表
気象台では10月7日16時42分の爆発に関連して、7日18時00分に臨時火山情報
第1号を発表し、その後の状況をお知らせする火山観測情報を7日と8日に計
2回発表しました。

[参考資料]

平成12年10月7日16時42分の爆発による降灰分布
(10月7,8日の鹿児島地方気象台の現地調査による)

桜島港駐車場 ・・・・・・・・最大3cmの火山礫 約2.1kg/m2
国民宿舎「レインボー桜島」・・最大3cmの火山礫 約1.5kg/m2
烏島展望所 ・・・・・・・・・最大3cmの火山礫 約650g/m2
桜島桟橋,水族館 ・・・・・・最大4mmの火山礫

降灰と噴石について

 火山が噴火したときの噴出物には、噴煙、降灰、噴石、溶岩があります。そ
のうち、降灰と噴石の種類について紹介します。
降灰現象時の降下物には、火山灰と火山礫があります。この2つは下表のよう
に粒の大きさにより分類しています。

 表1.降灰の種類
 大きさ     種類
 直径2mm未満   火山灰
 直径2〜64mm   火山礫

 気象台では、毎日9時に前24時間の1uあたりの降灰量(重さ)を測定し
てその日の降灰量としています。大噴火の際には、火山灰がおびただしく積も
ることもあり、そのような場合には積もった厚さを測定することもあります。
 噴石については、その大きさにより下表のように分類して表現しています。

 表2.噴石の大きさ
 噴石の大きさ  表現の方法
 6〜10cm     こぶし大
 10〜30cm    人頭大
 0.5〜1m     半身大
 1.5〜2m     人身大
 3m以上     巨大

 噴石は火山岩塊ともいい、そのうち特定の形をしたものを火山弾と呼ぶこと
もあります。また、黒色の多孔質(穴の多い)のものを岩滓(がんさい)また
はスコリア、白色の多孔質のものを軽石と呼ぶこともあります。
 気象台では、桜島の爆発時には、飛散した噴石の量(少量、中量、多量)
と、飛散した範囲(山の合目で表現)を目視や遠望カメラによって観測してい
ます。
 噴石の大きいものはほとんど風の影響を受けずに飛散します。水平到達距離
は通常火口から1〜2km程度ですが、強い噴火では数km程度まで飛散すること
があります。小さい噴石や降灰は風の影響を受けて風下に流れることが多く、
高い噴煙が上がった場合や風が非常に強い場合に降灰は数十kmまで飛散して、
自動車の窓ガラスを破損したり、交通障害や家屋・農作物に被害を与えること
があります。


定期火山情報
第6号

                        平成12年6月12日10時
                        鹿児島地方気象台発表

 火山名:桜島

1.概況
 5月の桜島南岳の活動は、月の前半が静穏で後半はやや活発でした。1ヶ月
間の噴火回数は27回、そのうち爆発的噴火(爆発)は15回でした。
 6月に入ってから活動は静穏で、12日9時現在、噴火・爆発はありません。
 桜島南岳は現在静穏な状態ですが、今後の火山活動には十分注意して下さ
い。

2.噴火の状況
 5月の噴火回数は27回(前月4回)で、そのうち爆発は15回(前月0回)で
した。特に爆発は17日まで発生せず、無爆発継続日数は3月27日から通算52日
でした。また、5月24日以降噴火活動はふたたび静穏となり、本日9時まで爆
発はありません。
 15回の爆発のうち、体感空振は6回(いずれも小)、爆発音は3回(いずれ
も小)で、噴石等はありませんでした。
 5月の日別の噴火・爆発回数は次表のとおりです。

 5月の日別噴火・爆発回数
   日   1 3 10 14 18 19 20 21 22 23 24 25 合 計
 噴火回数 2 1 2 1 4 2 3 3 2 5 1 1  27
 爆発回数 0 0 0 0 4 1 1 3 2 4 0 0  15
      注)爆発は噴火の一形式であり、噴火回数の中にも含まれていま
す。

3.遠望観測
 27回の噴火のうち噴煙を観測できたのは20回で、噴煙量は多量1回、やや多
量2回、中量16回、少量1回でした。火口縁からの噴煙高度の最高は、24日10
時14分の噴火の3,500mでした。

4.震動観測
 火山性地震は24日〜25日にやや多く発生し、その他は比較的少ない状態で経
過しました。火山性微動は数日周期で増加・減少を繰り返しました。
 震動観測点B点(南岳火口から北西 2.3km)での5月の火山性地震の回数は
1,192回で、前月(464回)より増加しました。また、火山性微動の出現時間は
月合計64.7時間で、前月(16.3時間)より増加しました。
  
           5月の火山性地震・微動回数
            上 旬 中 旬 下 旬  合 計
  火山性地震回数    212  199  781  1,192
  火山性微動回数    235  207  152   594
火山性微動出現時間(h) 21.9  35.4  7.4  64.7

5.降灰の観測
 気象台における降灰の観測では、5月の降灰日数は9日で、1ヶ月間の降灰
量の合計は16 g/uでした。

 気象台における5月の日別降灰量(g/u)
  日  9 10 14 19 20 24 25 26 27 合計
 降灰量 8 0 0 4 1 0 2 1 0  16

鹿児島県消防防災課によると、5月の1ヶ月間で降灰の多かった場所と降灰
量は次のとおりです。
 @桜島町武    2,777 g/u    A桜島町西道   1,520 g/u
 B鹿児島市黒神   943 g/u    C桜島町湯之平   912 g/u

[参考資料]

 鹿児島地方気象台における桜島南岳の爆発的噴火(爆発)の判定基準
爆発的噴火(以下、爆発という。)とは噴火の一形式であり、地下の高温や高
圧源により内圧が増大して起こり、時に火口や山体を破壊し、音響ソとともにガ
ス、水蒸気、岩石等を放出し、空振を伴う現象のことを言います。鹿児島地方
気象台では桜島南岳の爆発について、その判定基準を以下のようにしていま
す。その他の火山については、気象台の判定基準は定めていません。

[気象台における桜島の爆発判定基準]
爆発地震が発生し、
@ 気象台で爆発音を観測した場合。あるいは
A 気象台で体感空振を観測した場合。あるいは
B 噴石の火口外への飛散を観測した場合。あるいは
C 気象台に設置している空振計が最大振幅0.03hPa以上を記録した場
合。
補足1) 気象台の空振計が欠測の場合は、鹿児島市高免に設置している空振
計の最大振幅     が0.10hPa以上の場合。
補足2) 気象台、鹿児島市高免の空振計がともに欠測の場合は、桜島町横山
に設置してい     る空振計や鹿児島市黒神に設置している空振計の記録
を参考にする。
ただし、上記の爆発基準を満たしていても噴煙が上がらないなど噴煙に変化が
見られない場合は、爆発としないこともある。

 鹿児島地方気象台における桜島南岳の噴火の判定基準
噴火とは、火口から火山灰等の固形物や溶岩を火口外へ放出する現象のことを
言います。桜島南岳はたえず噴煙を放出していることから、鹿児島地方気象台
では桜島に限り、噴煙量が中量(噴煙の高さが火口上概ね1000m)以上を噴火
としています。