樽前山

定期火山情報第1号
平成11年5月20日15時
苫小牧測候所発表
火山名 樽前山

 本年第1回目の樽前山の定期火山現地観測を5月17日、18日に実施しました。そ
の結果と最近の火山活動についてお知らせします。

1.概 況
 A火口(Z−A)は活発な噴気活動が続いており、赤外放射温度計による噴気温度は
482℃で、前回(昨年10月)の178℃より高くなっています。これは観測開始
(1990年)以来最も高い温度となっています。ドーム南西火口(Z−E)は、今年
1月の遠望観測で約4年ぶりに噴煙を観測しましたが、今回の現地観測では硫黄による
新たな変色域の広がりと、前回より活発な噴気活動を確認しました。また、火口原北東
噴気孔(Z−F)のガス観測では亜硫酸ガスが検出されました。
 地震活動は本年5月1日から3日にかけて地震が増加し、日回数が2日は211回、
3日は173回となりました。なお、現在は少ない状態で推移しています。
 震動観測や遠望観測、現地観測の結果から樽前山の活動は活発化しています。

2.震動観測
 山頂ドームの東北東約1.1kmに設置してある地震計(A点)による観測では、昨年
10月から本年5月19日までの火山性地震の月別回数は下表のとおりです。第1図に
示すように、ここ数年は断続的に増減を繰り返しながらやや活発な状態が続いており、
特に本年5月1日から5月3日にかけて地震回数が増加し、日回数は2日が211回、
3日は173回となりました。日回数が100回を超えたのは1981年2月21日以
来のことです。現在、地震活動は比較的落ち着いた状況で推移しています。また、第2
図で示すように、1996年から地震回数が増加しており、今月の月回数は19日現在
で439回となっていますが、これは1978〜81年の活動が活発な時期に相当する
回数となっています。
  なお、火山性微動および体に感じる地震は観測されていません。

  表 月別火山性地震回数(1998年10月〜1999年5月19日) ※ 最大振幅0.2μm以上
------------------------------------------------------------------------------
  月   10  11  12   1    2   3   4   5
  回数  75  62  64  25  143  47  44 439
------------------------------------------------------------------------------
     
3.遠望観測
 苫小牧測候所からの遠望観測では、今年1月にドーム南西火口(E火口)から噴煙を
観測し、その後も引き続き少量で高さ10〜100mの噴煙が観測されています。この
火口では、1982年に噴煙の高さ400mが観測された以降は減少傾向にあり、19
95年3月から噴煙は観測されていませんでした。昨年10月以降のA火口およびドー
ム南西噴気孔群の噴煙は,いずれも白色で噴煙量も少なく、状況に大きな変化は認めら
れません。

4.現地観測
  1)A火口(Z−A)
    A火口は、活発な噴気活動を続けており、高温で有毒な火山ガスを含む噴煙には強
  い刺激臭が認められます。第5図に示すように火口南側5m地点からの赤外放射温
  度計による観測では、噴気温度は482℃で前回(178℃)と比べ高くなっており、
  赤外放射温度計の観測開始以来、最も高い値となっています。火口の状況に変化は
  ありませんが,崩れやすい状態となっています。
  2)ドーム南西噴気孔群(Z−B)
    全体的に噴気活動に大きな変化はありませんが、噴気には依然強い刺激臭が認めら
  れます。定点の噴気・地中温度は96℃で地熱活動はここ数年低いレベルで経過し
  ており、噴気孔の多くは固結した硫黄昇華物に被われています。
  3)ドーム南西火口(Z−E)
    1997年秋の観測で噴気活動の再開が確認され、今回のドーム上からの観測では、
  噴煙は白色で火口縁からの高さは20m、前回より刺激臭が強く、はっきりと聴き
  取れる噴気音を確認しました。また、火口東側内壁では硫黄による変色域の拡大が
  認められました。火口西側内壁の状況は前回の観測と比べて大きな変化はありませ
  んでした。
  4)火口原北東噴気孔(Z−F)
  引き続き活発な噴気活動が続いています。噴気・地中温度は96℃で、前回から変
  化はありません。また、火山ガスの測定では、亜硫酸ガスが1976年8月以来
  23年ぶりに検出されました。
 5)ドーム南東亀裂(Z−H)
    壁面中央部の噴気孔は依然活発な噴気活動が続いています。噴気温度や変色域は前
  回に比べ変化はありません。壁面は風化を受けてもろくなっており、部分的に大き
  な亀裂が認められるなど崩れやすい状態となっています。
 6)その他
  その他の観測点では特に異常は認められません。

5.注意事項
 各火口や噴気孔からは高温で有毒な火山ガスを含む噴煙が噴出しています。特にA火
口の噴煙は,風向きによっては登山道にまで流れることがあります。また、A火口やド
ーム周辺は崩れやすい状態になっています。登山者は十分注意して下さい。

6.その他
 今後火山活動に変化が見られた場合は火山情報で随時お知らせします。
火山観測情報第12号 平成11年5月6日10時10分苫小牧測候所発表 火山名 樽前山  樽前山の火山活動状況をお知らせします。(平成11年5月3日08時15分発表, 臨時火山情報第1号関連)  気象庁A点の地震計(7合目ヒュッテ付近,山頂ドームの東北東約1.1km)で 観測された6日10時までの地震回数は次のとおりです。    5月1日20時〜24時    9回      2日00時〜24時  160回      3日00時〜24時  169回      4日00時〜24時   10回      5日00時〜24時   16回      6日00時〜10時    3回  5月1日20時〜6日10時までの総回数は367回となっています。4日以降は, 1日の地震回数は10〜16回と少ない状態が続いています。  なお,火山性微動は観測されていません。  また,苫小牧測候所からの遠望観測では,噴煙の状況は山頂に雲がかかり不 明です。  このように,地震の発生回数が減少しましたので,臨時火山情報第1号関連の 火山観測情報の発表は,第12号をもって中止します。  今後活動に変化があった場合は火山情報で随時お知らせします。
火山観測情報第11号 平成11年5月5日16時10分苫小牧測候所発表  火山名 樽前山  樽前山の火山活動状況をお知らせします。(平成11年5月3日08時15分発表, 臨時火山情報第1号関連)  気象庁A点の地震計(7合目ヒュッテ付近,山頂ドームの東北東約1.1km)で 観測された5日16時までの地震回数は次のとおりです。    5月1日20時〜24時    9回      2日00時〜24時  160回      3日00時〜24時  169回      4日00時〜24時   10回      5日00時〜10時   10回        10時〜16時    4回  5月1日20時〜5日16時までの総回数は362回となっています。  なお,火山性微動は観測されていません。  また,苫小牧測候所の遠望観測では,3日16時から悪天のために噴煙の状況は 不明でしたが、本日12時の遠望観測では,A火口の噴煙は白色で少量,高さは20 m,E火口の噴煙は白色で少量,高さは10mで大きな変化はありません。  次の火山観測情報は6日10時10分頃に発表する予定です。  今後火山活動に変化があった場合は火山情報で随時お知らせします。

火山観測情報第9号 平成11年5月4日16時10分苫小牧測候所発表 火山名 樽前山  樽前山の火山活動状況をお知らせします。(平成11年5月3日08時15分発表,臨時 火山情報第1号関連)  気象庁A点の地震計(7合目ヒュッテ付近,山頂ドームの東北東約1.1km)で観測 された4日16時までの地震回数は次のとおりです。    5月1日20時〜24時    9回      2日00時〜24時  160回      3日00時〜24時  169回      4日00時〜06時    2回        06時〜12時    2回        12時〜16時    3回  5月1日20時〜4日16時までの総回数は345回となっています。  なお,火山性微動は観測されていません。  また,苫小牧測候所からの遠望観測では,噴煙の状況は悪天のため不明です。  次の火山観測情報は5日10時10分頃に発表する予定です。  今後火山活動に変化があった場合は火山情報で随時お知らせします。

火山観測情報 第4号 平成11年5月3日15時15分 苫小牧測候所発表 (略)   5月3日00時〜03時 43回      03時〜06時 53回      06時〜09時 32回      09時〜12時 16回      12時〜15時 18回 (略)
火山観測情報 第3号 平成11年5月3日11時40分 苫小牧測候所発表
臨時火山情報 第1号 平成11年5月3日08時15分 苫小牧測候所発表 火山名 樽前山  樽前山で火山性地震が増加しています.  樽前山では,5月1日20時頃から地震が多くなっており,3日00時15分に火山観測情 報第2号を発表しましたが,その後も地震の回数が1時間に10回以上と多い状態が続い ています.また,3日00時以降やや大きい振幅の地震も観測されています.気象庁A点 の地震計(7合目ヒュッテ付近,山頂ドームの東北東約1.1km)で観測された3日08時 までの地震回数は次のとおりです.   5月1日20時〜24時  9回   5月2日00時〜24時 160回   5月3日00時〜08時 118回 5月1日20時〜3日08時までの総回数は287回となっています. 5月2日の日地震回数が100回を超えたのは,1981年2月17日に129回,2月21日に128回 を観測して以来のことです.  なお,火山性微動は観測されていません.  苫小牧測候所の3日08時の遠望観測では,噴煙は観測されていません. 今後の火山活動に注意して下さい.
火山観測情報 第2号 平成11年5月3日00時15分 苫小牧測候所発表
火山観測情報第1号 平成11年5月2日17時00分苫小牧測候所発表 火山名 樽前山  樽前山で火山性地震が増加しています。  樽前山では,昨日20時頃から地震が多くなっており,気象庁A点の地震計(7合目ヒュッ テ付近,山頂ドームの東北東約1.1km)で観測された本日16時までの地震回数は次の とおりです。    5月1日20時〜24時    9回    5月2日00時〜06時   17回        06時〜12時   28回        12時〜16時   27回  5月1日20時〜2日16時までの総回数は81回となっています。  樽前山では1996年6月以降地震活動が活発になり,1〜2ヶ月程度の間隔で断続的に 地震回数の増加が見られます。  なお,火山性微動は観測されていません。  苫小牧測候所の遠望観測では,5月2日の16時現在,A火口の噴煙は白色,高さは10 m,ドーム南西火口(E火口)の噴煙は白色,高さは10mで大きな変化はありません。  今後火山活動に変化があった場合は火山情報でお知らせします。