有毒ガスの吸引による事故を避けるには

 火山から放出されるガスのほとんどは人体に無害な水蒸気だが,有毒な二酸化硫黄(SO2),硫化水素(H2S),二酸化炭素(CO2),塩化水素(HCl)なども含まれている.火山活動が活発になるとこれら有毒ガスの占める割合が増加する.これらのガスはいずれも空気より重いので,無風時は窪みや低地に滞留する.登山中にそのような条件下で刺激臭や卵の腐ったような匂いを感じたら,すぐに風通しのよい高い場所に移動するのがよい. H2Sの場合,水で湿したタオルを口に当てるとガスマスクの代わりになるが,過信してはならない.CO2は無色無臭だから始末が悪い.H2Sも高濃度になると,卵の腐ったようなにおいを感じなくなるので注意を要する.短時間で意識がなくなる濃度は,H2Sで400ppm,CO2で15%である.SO2の場合は100ppm程度の濃度に約30分間耐えられる.

過去の死亡事故:


硫化水素H2S:空気に対する比重1.19,無色,腐卵臭.目と皮膚を刺激する.

二酸化硫黄SO2:比重2.26,無色,刺激臭.亜硫酸ガスともいう.空気中0.003%(30ppm)以上で植物は枯死し,0.012%以上で人体に害を及ぼす.酸性雨や湖沼の酸性化の原因のひとつでもある.

二酸化炭素CO2:比重1.53,無色無臭.酸欠による呼吸困難をひきおこす.炭酸ガスともいう.

塩化水素HCl:比重1.27,無色,刺激臭.少量でも目・皮膚・粘膜を刺激する.


中毒事故が発生しやすい地形と気象

  1. 火山性有毒ガスのほとんどは空気より重いので窪地に滞留しやすい.
  2. 晴れていれば上昇気流が発生するが曇天時はそれがなく空気の入れ換えが起こりにくい.霧が立ちこめているときはガスが滞留しやすい.
  3. 風速によっては風下側も高濃度になりやすいことがある.