浅間山は火山である。山頂火口から測って半径4キロの円内は、だいたい溶岩でできている。これが一般に山として認識されている浅間山である。
 浅間山の北と南にはなだらかな裾野が20キロくらいまで続いている。そこが人間活動の場になっている。農地だけでなく、集落や街もある。北西角の姥が原を除いて、ここは浅間山から流れてきた火砕流または土石なだれがつくった土地である。
 火砕流はマグマが泡だって高速で流れて来る現象だ。マグマは、火口を出るときは1000度。流れ終わったときでも300度以上ある。水と同じように流れ下って、平坦な土地をつくる。
 土石なだれは、山体がくずれて流れて来る現象だ。温度は常温だが、流れは時速100キロ程度と高速だ。土石のなかにはとても大きな岩が含まれているから、それが核となって地表に流れ山ができる。ちょっと奇妙に思えるかもしれないがが、浅間山の場合は、土石なだれのほうが火砕流より遠くまで達している。どこまで届くかは、流れる物質の量に大きく支配される。
 火砕流か土石なだれか、何年前の噴火によるものかで、土地の使われ方が異なる。新しい時代に火砕流におおわれた土地は、表土が不足しているから農地として耕すには適していない。そういった土地は、いくら平坦でも最後まで開墾されずに残った。いまは別荘地として有効に利用されている。
 
浅間火山北麓の電子地質図 2007年7月20日
著者 早川由紀夫(群馬大学教育学部)
描画表現・製図 萩原佐知子(株式会社チューブグラフィックス
ウェブ製作 有限会社和田電氣堂
この地質図は、文部科学省の科研費(17011016)による研究成果である。
背景図には、国土地理院発行の2万5000分の1地形図(承認番号 平19総複、第309号)と、 北海道地図株式会社のGISMAP Terrain標高データを使用した。